株式会社uloqo ミッショングレード制とは?他の評価制度との違い、メリット・懸念点を解説 株式会社uloqo

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2024-07-25

ミッショングレード制とは?他の評価制度との違い、メリット・懸念点を解説

(株)uloqo 代表取締役 関川 懸介

この記事の監修者:(株)uloqo 代表取締役 関川 懸介

グローバル化や人材不足、人件費の高騰が進む中、従来の年功序列型の評価方法から、与えられた役割とその成果に基づいて評価を行うミッショングレード制(役割等級制)を導入する企業が増加しています。

しかし、そもそも「ミッショングレード制についてよく知らない」「成果報酬と何が異なるの?」など様々な疑問を企業の人事担当者様は抱えている方もいるでしょう。

そこで本記事では、
・ミッショングレード制とは
・ミッショングレード制とその他の評価制度の違い
・導入に向いている企業の特徴
について解説します。

ぜひ本記事を参考にミッショングレード制について理解を深めてください。

ミッショングレード制(役割等級制)とは

ミッショングレード制度とは、役職やキャリアなどで役職やキャリアなどで社員の役割を設定せずに、従業員一人ひとりに与えた役割(ミッション)に応じて等級(グレード)を決め、その成果を評価する制度を指します。

日本に定着している職能資格制度と職務等級制度のハイブリット型とも言え、概念として新しい等級制度です。従業員を客観的に評価可能になり、企業理念に沿って従業員に役割を与えられるので、日本の企業文化に合った制度と考えられます。

年齢や勤続年数、キャリアに関係なく、役割の価値の大小によって等級が決められ、その等級に求められる成果をどれだけ達成できたかが評価されます。

そのため、年功序列の傾向が弱く、成果(実力)主義に近い傾向があり、「年下の上司」や「年上の部下」が生まれやすくなります。

ミッショングレード制の導入が進む背景

ミッショングレード制が求められるようになった背景は大きく3つ挙げられます。
・グローバル競争の激化し、スピード感が求められる
・多様な働き方が拡大し、評価の柔軟性が必要
・個々のキャリア開発への意欲が高まっている

グローバル競争の激化し、スピード感が求められる

グローバル化が進む中、企業は国内だけでなく、世界全体で競争し、協力する必要があります。このため、迅速な意思決定と柔軟な対応が企業にとって不可欠です。

従来の職能資格制度では、正確な判断が可能である一方、意思決定に時間がかかり、チャンスを逃すことが多くありました。そこで、ミッショングレード制を導入することで、従業員が役割(ミッション)に基づいて自律的に行動し、状況の変化に迅速に対応できる柔軟性を持たせられます。

多様な働き方が拡大し、評価の柔軟性が必要

コロナ禍を経て、労働スタイルが大きく変わり、リモートワークやフレックスタイム制を求める労働者が増加しました。その結果、働く場所や時間に縛られず、成果に基づいて評価を行うことが求められるようになりました。

ミッショングレード制の導入により、従業員がどこで働いているかや何時に働いているかではなく、どのような成果を上げたかに焦点を当てて評価することが可能になります。ワークスタイルの自由度が高まり、従業員のモチベーション向上と公平な評価につながるでしょう。

個々のキャリア開発への意欲が高まっている

近年、生涯一つの企業で働くという考え方が薄れ、キャリアの途中で転職や再教育を選ぶ労働者が増加しています。

ミッショングレード制は、評価を個々の成果や目標設定に基づいて具体的に行うため、キャリア開発を支援する効果をもたらします。これにより、従業員の自己成長と企業の成長が両立しやすくなります。

その他の評価制度との違い

先程から少し触れている職能資格制度や職務等級制度のミッショングレード制以外の代表的な評価との違いについて以下の表にまとめました。

ミッショングレード制は2つの評価制度の中間的な立ち位置にあります。企業の特徴や業界の特徴に合わせて適切な評価制度を導入する必要があるでしょう。

ミッショングレード制を導入する4つのメリット

ミッショングレード制を導入した際の4つのメリットについて解説します。

従業員の主体性の醸成する

達成目標が給与に明示されることで、従来の評価制度と比較して、個人の達成した役割・成果に応じた給与が適切に支払われます。

会社が求める役割を適切に把握し、その評価額を知ることで、従業員の主体性を醸成することが可能になります。給与でのモチベーション管理ももちろんですが、個人の働く目標も明確になることで、モチベーションを維持しやすいというメリットもあります。

管理職を柔軟に評価可能

管理職は
・チームパフォーマンスの定量化が難しい
・複数のステークホルダーによる評価のばらつき
・長期的な影響の評価を測りにくい
などの評価が難しいとされる項目が多いです。

ミッショングレード制では、あらかじめ管理職の役割価値を設定し、その大きさによって等級を変えられるため、従来より公正に評価しやすい特徴があります。

社内で連携が取りやすい

業務の成果のみに基づいて業務を行う場合は、社員それぞれが目的のために割り切って働くケースが見られます。

一方ミッショングレード制では、社員に異なる役割があり、給与テーブルに明確に反映されるため、目標や課題を社内で連携を取る意識が芽生えるような仕組みになっています。

業務内容と成果に応じて人件費が支払われる

成果に応じて適切な給与を支払うことができ、スタッフのモチベーション向上や生産性向上につながります。

職能資格制度が長期間同じ給与テーブルを維持するのに対し、ミッショングレード制は目標に応じてタイムリーに給与テーブルを変更可能です。

企業としては人件費の無駄を削減することが可能であり、また、従業員個人も適切な評価を受けている感覚をもたらすことが可能でしょう。

ミッショングレード制へ移行する際の3つの懸念点

現状の評価制度からミッショングレード制へ移行する際の懸念点について解説します。

降格・降給があり、社員に不満をもたれやすい

ミッショングレード制では役割に対して評価が与えられるため、社員全員が降格・降給の対象となる可能性があります。

特に、勤続年数の長い社員が降格・降給となった場合不満が生じやすいでしょう。また、年功序列的な給与の上昇が期待できず、職場環境の心理的安全性が低くなる恐れがあります。

社内の意識として、「主体的に成果を出す」ことを浸透させ、成果に応じた報酬が支払われることの理解を促しましょう。また、等級の引き下げを防ぐ仕組みづくりが不可欠にもなります。

設計と運用の難易度が高い

全ての評価基準について、公式規格はなく、各会社の裁量に委ねられています。その為会社側には、従業員が納得のいくような基準を策定する必要があります。

特に役割の定義を作成を行うには。評価の公平性・客観性の観点を常に意識する必要があり、ノウハウが必要になります。全社員が納得できるような評価基準を作成することは困難を極めるでしょう。

運用に関しても、社員を役割ごとに個別に評価する必要があり、必要な工数が増加する駅光があります。

評価基準が曖昧になるリスクが有る

ミッショングレード制では、評価基準が曖昧になる可能性があります。理由として、職務等級制と比較して、評価基準が抽象的であるため、評価の根拠が曖昧になってしまうことがあります。

社員ごとに仕事へのアプローチが異なるため、個々の社員の特性や成果を適切に評価することが困難かつ、評価者側も抽象的な基準で従業員の仕事を評価することになり、手間や時間、目標の理解が必要になります。

評価プロセスに関してのノウハウが少ないことで、評価に手間と時間がかかり、それぞれの評価がブレやすいため、評価基準が曖昧になりやすいです。

ミッショングレード制へ移行する6つのステップ

ここでは、ミッショングレード制の評価制度に移行するために行う6つのステップについて解説します。

概要の設計

役割等級制度は企業の事業目的や課題、必要な人材などの洗い出しを行い、導入後のゴールを認識することが重要です。

他社の導入事例をそのまま適用させた場合には、社員の評価軸が企業の目的とずれることが多く、正しく人事評価を行えません。

役割等級制の導入目的を理解し、企業の事業の推進と人事評価の方針について経営陣でまとめる必要があります。

役割等級数の決定

方針が決まった後に、役割を適切な数で分けることが重要になります。等級が少ない場合には、同じグレードに多くの社員が該当し、実力の向上に対して、次の等級に進むまでに時間を要してしまいます。

しかし、等級を多くするために、細かく分けると各等級の定義付けの難易度が高くなります。等級を分ける際は管理ポジションで2〜3程度、一般職で4〜5程度に分けましょう。加えて、社内の職種で分けるようにしましょう。

等級定義の決定

社内で設定する等級数が決まったら、各グレードで求められる目標・あるべき姿を決めましょう。求められる目標は、各等級の役割の基準に該当します。基準は言葉で明確に示し、誰もが理解できる言葉で、内容の誤認が起きないように注意しましょう。

役割等級定義の決定・役割定義書の作成

求められる成果」「必要な能力」「裁量と責任の大きさ」などに関して、役割の境界が重なったり、役割の内容が曖昧になったりして、システムが機能不全に陥ることを防ぐために、役割定義書を作成しましょう。

適切な役割定義によって、社員の評価への満足感や役割の有効性が高まり、生産性の向上につながります。

また、評価プロセスは社員を個別に評価するため非常に時間を要します。そのため、基準が完全かつ測定可能なわかりやすい指標を用いる必要があります。

任用基準の決定

昇進や任用のプロセスを明確にし、透明かつ公平な基準を設けます。ここでは、役割に対して数値的な達成目標だけではなく、上位職の推薦などの項目も設定します。

評価のためだけでなく、社員のモチベーションを向上させるためにも、各等級間で基準が一貫していることや、社員が理解しやすい基準になっているかが非常に重要になります。

移行・浸透プロセスの設計

評価制度の移行には、社員の理解を得ることが必要になります。そこで、制度全体を客観的・具体的にすることを心がけて設計しましょう。加えて、制度に慣れるための説明会の開催や、評価を行う管理職との研修による制度の浸透を図るようにしましょう。

説明会や研修では、
・制度の目的
・メリット
・これまでとの変更点
・評価プロセスの詳細
など、包括的な内容を説明することが重要になります。さらに、従業員の質問を受け、懸念事項を解決する機会の提供が浸透を進めるでしょう。

ミッショングレード制の導入に向いている企業

ミッショングレード制の導入に向いている企業の特徴について解説します。
・フラットな組織構造を持つ企業
・成果主義を重視する企業

フラットな組織構造を持つ企業

第一に従来の年功序列や職能資格制度に依存せず、フラットな組織構造を持つ企業に向いています。制度を導入する前の段階で年功序列の概念がない企業では、従業員の理解が進みやすく、浸透が早い傾向があります。

また、同様に若手の重視する企業も適しています。勤続年数に関係なくフラットなため、役割と成果に基づいて評価が行われるため、若手社員のモチベーションを高めることに繋がります。

成果主義を重視する企業

役割の難易度や重要度に応じて評価や報酬を決定するため、成果主義を重視する企業に適しています。また、上記と同様ですが、導入のハードルが低い傾向にあり、受け入れられやすいでしょう。

また、成果主義を重視したため、社員の育成や定着に主眼が置かれていなかったが、ミッショングレード制を導入することで、チャレンジ精神が高い状態で定着率が向上すると考えられます。

ミッショングレード制の導入事例

ミッショングレード制を導入した企業の事例について2社紹介します。

株式会社クボタの事例

職種ごとに3つのコース、またコースごとに等級が規定されており、業績貢献度に応じて進級していきます。

各従業員の能力や意欲に基づいたコース変更も可能であり、クボタの人事制度運営の基本的な考え方である「適材適所」「機会均等」を実現しています。

キヤノン株式会社の事例

役割等級によって基本給を、また1年間の業績と業務プロセス・行動に応じて年収を確定しています。

個人の業績だけでなく会社の業績も賞与に反映されるため、企業の一員としての自覚を促し、個人の成果向上につなげています。

まとめ

ミッショングレード制では、人事評価を社員の役割とその成果によって評価が行われます。そのため、従業員はそれぞれ個人の役割、目標を明確に持ち、その到達目標に向けて働くことが可能になります。

導入や運用について、課題も多くありますが導入後は社員の生産性が向上しやすい評価制度となっています。

本記事を基に、ミッショングレード制について少しでも理解いただけたら幸いです。

(株)uloqo 代表取締役 関川 懸介
この記事の監修者:(株)uloqo 代表取締役 関川 懸介

2016年4月、(株)uloqoを設立。
代表取締役として各領域を管掌。現在も大規模案件のディレクターとして、採用・エンジニア採用・人事評価制度策定支援等に従事。
累計300社以上の支援実績を誇る。大手新聞社やテスト支援会社、フリマアプリ企業をはじめとしたエンタープライズ企業に対する支援実績が中心。採用企画・スカウト・採用広報・組織開発全般・デジタル人材全般に強みを持つ。

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