近年、企業経営にダイバーシティー、グローバル化が求められています。その中で、採用活動において「ブラインド採用」という方法に注目が集まっています。
企業のご担当者様の中には、
・ダイバーシティを推進したいが、方法が分からない
・ブラインド採用はなぜ注目されているのか
・本当に効果はある?
などの悩みや不安を抱える方も多いと思います。本記事では、ブラインド採用についてそのメリットやデメリット、導入の方法、注意点など詳しく解説していきます。
ブラインド採用とは、選考過程において個人情報を取り除き、能力のみで応募者を評価する採用手法のことを指します。ブラインド採用の導入により、性別や学歴、容姿といった要素による無意識の偏見が選考に影響を与えることを防ぐことができます
例えば、採用に明確な基準がない場合、女性であることを理由に営業職に不向きだと判断したり、多くの社員が大学卒であるために大学卒の応募者が社風に合うと見なしたりすることがあります。これらは採用担当者の無意識の偏見によるものです。
採用担当者自身も気付いていない偏見や先入観によって、企業に似たようなタイプの人材が集まってしまい、価値観や能力の多様性が乏しくなってしまうケースは多く、そのような事態を防ぐことが期待できます。
このように、ブラインド採用は多様な人材の確保に有効な採用手法だと言えます。
ブラインド採用が注目される背景には、企業がダイバーシティ推進を求められているという点があります。
そもそもダイバーシティとは、人種・国籍・宗教・思想などの違いを持つ多様な人材を受け入れ、活用する取り組みのことです。アメリカなどの多民族国家では、日本よりも広く普及している考え方です。年齢や性別以外にも、人種による偏見を排除することが差別解消の手助けにもなります。
日本においても、人材不足や外国人労働者の増加、働き方改革、女性の社会進出などの社会的背景から、ダイバーシティといった言葉がより注目されるようになりました。そこで、ダイバーシティを実現するための採用方法として、ブラインド採用が注目されています。
近年のデジタル化や少子高齢化の影響で、ビジネス環境は絶えず変化しています。こうした状況で、多様な価値観を持つ人材を増やすことで、消費者ニーズに応じた商品やサービスを開発しやすくなり、組織全体の成長がより期待できます。
つまり、ブラインド採用は即戦力となる人材や多様性のある人材を効果的に採用でき、変化し続ける現代のビジネス環境に適した採用方法だと言えます。
ブラインド採用によって得られるメリットは以下の6つがあります。
・多様な人材を採用できる
・優秀な人材を確保できる
・公平な採用ができる
・新たなアイデアの創出が期待できる
・社会のニーズに対応できる
・企業ブランド価値の向上につながる
それぞれについて詳しく解説します。
偏見や先入観にとらわれない選考を行うことで、多様な人材を確保できます。
従来の採用方法では、採用担当者が学歴や年齢などに先入観を持ちやすく、採用の判断が左右されたり、同じタイプの人材が集まりやすくなることも少なくありませんでした。ブラインド採用では、このような偏った判断を防ぐことができます。
普段の採用選考において、無意識に見過ごされていた優秀な人材を確保することができます。
例えば、能力を判断する際に採用担当者が学歴を重視してしまうことがあります。しかし、実際の能力は出身大学だけで判断できるものではありません。名門大学卒業者とそうでない方のどちらかを採用する際、多くの人が名門大学卒業者に期待を寄せるでしょう。
しかし、実際に働き出した際に期待通りの成果を上げるとは限りません。
ブラインド採用を導入することで、これまでの採用活動では能力があるにもかかわらず、個人情報のフィルターによって採用対象から外れてしまっていた人材も採用できるようになります。
能力以外の情報を排除することで、すべての応募者に対して公平な採用が実現できます。
どれだけ公平な採用を心掛けても、自分でも気づかないうちに「女性だから」や「○歳だから」といった、実際の能力とは無関係な要素に注目してしまうことは避けがたいものです。
ブラインド採用を導入すれば、これらの情報がないため、先入観にとらわれずに公平な判断ができるというメリットがあります。
この点は求職者にとっても同様のメリットです。自分の能力を公平に評価してもらいたいと考える求職者は、ブラインド採用を実施している企業を選ぶことがあります。
多様な人材を採用することで、社員の価値観やスキルに幅が出て、新たなアイデアの創出が期待できます。
採用活動を続けていくと、似たような価値観を持つ従業員ばかりを採用してしまうことがあります。従業員の価値観が変わらなければ、アイデアが似通ってしまい、事業の発展が停滞する恐れがあります。
ブラインド採用を活用すれば、既存のメンバーでは生まれなかった視点や解決策が生まれ、組織の活性化や新事業の創出につながるでしょう。
現代では人々の価値観が多様化し、社会の変化が著しくなっています。こうした変化に対応するためにも、多様性が必要です。
多様性のある人材を採用することで、急速に変化する社会のニーズに合わせた商品やサービスを開発しやすくなり、企業の競争力を高めることが期待できます。
企業におけるブランド価値の向上も大きなメリットです。多様性や公平性を重視することは、社会的な関心事でもあります。
ブラインド採用を導入している企業は、多様性と公平性を重視する企業として社会的に高い評価を受けるでしょう。その結果企業のブランド価値が向上し、長期的な視点での人材確保と企業価値の向上につながります。
具体的には、優秀な人材の応募が促進されたり、信頼性と評判が向上したりといった効果が見込めるでしょう。
ブラインド採用のデメリットとしては主に以下3つあります。
・ミスマッチが発生しやすい
・従業員同士のばらつきが生じやすくなる
・採用活動が長期化しやすい
それぞれについて詳しく解説します。
従来の採用選考では、履歴書や面接を通じて応募者の能力だけでなく、志望動機、長所、短所なども把握できるため、人柄や価値観を理解できます。
一方、ブラインド採用では、採用担当者が理解できるのは応募者の能力のみであるため、社風に合わないといったミスマッチが生じる恐れがあります。
ブラインド採用は、応募者の年齢や性別を考慮せずに採用する方法であるため、社員構成のバランスに偏りが生じる可能性があります。
例えば、ブラインド採用によって女性ばかりが採用され、社員の女性比率が極端に高くなることも考えられます。
ブラインド採用では通常の採用活動に比べて判断材料が少ないため、慎重に採用を決める必要があり、その結果として採用期間が長引きやすいというデメリットがあります。
さらに、一人あたりにかける面接や選考の時間を延ばすと、その分他の業務が滞る可能性があり、採用コストの増加につながることも考えられます。
特に採用人数が多い企業においては、全員をブラインド採用で判断するにはかなりの時間がかかるため、逆算して一人あたりにかける時間やスケジュールを詳細に検討する必要があります。
以下に、ブラインド採用の具体的な方法を説明します。以下の3つのステップに分けて解説します。
1.採用担当者と事務担当者を分ける
2.専用書類を準備する
3.本人を特定できないように面接をする
それぞれについて詳しく解説します。
採用担当者が全て行ってしまうと個人情報が確認できてしまうため、業務を分ける必要があります。
採用と事務処理を行う担当者を分け、採用担当者には評価に関わる個人情報を削除した状態で書類を渡します。
選考に必要な情報のみが記載された特定の書類を用意するか、一般的な履歴書から個人情報を削除します。削除する項目としては、氏名、住所、年齢、性別、写真などが挙げられます。
面接の際にも音声や外見が採用担当者に確認されないようにします。
具体的には、「応募者の顔を見せない」「声を変える」などの方法を用いて、性別や年齢を推測できないようにします。パーテーションやボイスチェンジャーを活用しましょう。
では、ブラインド採用を実施する場合にどのようなことに気を付ければよいか、ポイントを解説します。
ブラインド採用を実施する際のポイントは3つあります。
・多様性を受け入れる風土をつくる
・採用基準を明確にする
・社員構成のバランスに配慮する
それぞれについて詳しく解説します。
ブラインド採用によって多様な人材を受け入れるためには、まずそのための体制を整える必要があります。体制が整っていない状況で、これまでと全く異なる社員を迎えると、既存社員も新入社員も戸惑う可能性が高いです。
多様性を高めるためにブラインド採用を導入する場合、社風や現従業員の価値観を変えていくことことが求められます。これにより、多様性を受け入れる企業文化を育て、一人一人が生き生きと働ける職場環境を作り上げることができます。
従業員の理解を深めるために、ダイバーシティ研修を導入するなどの企業として支援する取り組みが必要です。
ブラインド採用では通常の採用活動とは異なる視点が必要になるため、面接担当者によって評価が分かれることがあります。この問題を解決するためには、採用基準の設定をし、採用プロセスに関わるすべての関係者に共有しましょう。
また、ブラインド採用は応募者を能力のみで評価して採否を決定する手法であり、多様性の促進や優秀な人材の確保につながるというメリットがあります。その反面、入社後のミスマッチが生じやすいというデメリットもあります。
そのため、ブラインド採用を導入する際には、せっかく採用した人材が入社後のミスマッチによって早期離職してしまうことを防ぐために、能力だけでなく、自社の社風と応募者の性格や仕事に対する価値観がマッチしているかという評価基準も設けるとよいでしょう。
性別や年齢などの情報を除外して選考するため、社内の年齢層などのバランスが崩れる可能性があります。そのため、社内の年齢やジェンダーのバランスに配慮することが重要です。
評価項目を増やすなど、社員構成のバランスを意識した採用活動をしましょう。
最後に、ブラインド採用に関する事例を見ていきましょう。
ヘアケア商品などを販売するユニリーバ・ジャパンでは「LUX Social Damage Care Project」プロジェクトの第一弾として、全ての採用選考で、顔写真の提出や応募者への性別に関する一切の項目をカットする取り組みを行っています。
なお、採用公式サイトには、「選考を受ける前に知っておくべき3つのこと」の一つとして、「意欲とポテンシャルのみに焦点を当てて採用」という項目があります。
先の「LUX Social Damage Care Project」では、「#性別知ってどうするの」という言葉のもと、社会で無意識に起こっている性別や容姿への先入観を取り払うために、活動に賛同した企業とともにプロジェクトを推進しています。
賛同企業の一部は、以下の通りです。
現在では国内22の企業が賛同し、他にも三井化学、堂島麦酒醸造所、インターワークスなどで、選考時に性別の記入や顔写真が不要となっています。
いかがでしたでしょうか。今回はブラインド採用のメリット・デメリット、具体的な方法、そして実施する際のポイントについて説明しました。
ブラインド採用は企業成長に効果的な取り組みであり、今後採用する企業が増えることが予想されます。
企業成長のためには即戦力となるスキルのある人材を確保し、企業の多様化を促進していきましょう。