採用パンフレットは、合同説明会や会社説明会で求職者に配布することで、自社を効果的にアピールする重要な採用ツールです。その内容が求職者にとって魅力的でわかりやすければ、採用の質を向上させることができます。以下に、その詳細を説明します。
今回は採用パンフレットについて、内容やポイント、活用事例などを詳しく解説していきます。
採用パンフレットとは紙を媒体とした採用活動のツールで、リクルートパンフレットとも呼ばれています。会社案内のパンフレットとは異なり、求職者にアプローチするためのツールです。主に、合同企業説明会や会社説明会やセミナーで配布されることが多いです。近年ではネット上からでもPDFファイルで閲覧できる企業が増えています。
採用パンフレットを作成する目的は主に2つあります。
・企業の魅力を求職者に伝える
・求職者の疑問・不安を解決する
採用パンフレットは、求職者に自社への理解を深めてもらうために作成されます。業界や企業についての知識がない求職者にも分かりやすい内容にすることで、自社の魅力を正確に伝え、企業応募を促進できます。
このように企業の理念、業務内容、福利厚生、キャリアパスなどの情報を分かりやすく提供することで、求職者の不安を解消し、応募意欲を高める役割を果たします。
企業の業務内容や職場の雰囲気を具体的に説明し、求職者がどのような環境で働くのかをイメージしやすくしましょう。
求職者は入社前に「実際の雰囲気はどうか」「待遇はどうか」といったさまざまな不安や疑問を抱えています。採用パンフレットはこれらの不安を解消するために作成されます。
現役社員のインタビューや体験談を掲載することで、実際の働き方や職場の雰囲気についてのリアルな情報を提供します。これにより、求職者は企業の実態を理解しやすくなります。
よくある質問とその回答を掲載することで、求職者が一般的に持つ疑問に対する答えを提供し、不安や疑問を事前に解消する役割があります。
では、採用パンフレットを作成することによって何が得られるのでしょうか。以下4つのメリットについてご紹介します。
・リマインド効果
・自社の認知度拡大
・ 採用プロセスの効率化
・企業の認知度向上
それぞれについて詳しく解説します。
学生や求職者に定期的に最新のパンフレットを配布し、企業の最新情報を提供することで、リマインド効果を高めます。定期的な更新により、企業の新しい取り組みや変化を反映させることができます。
デジタル版のパンフレットを提供し、オンラインでいつでも確認できるようにすることで、求職者が必要な時に情報にアクセスしやすくなります。リンクやQRコードを使って、デジタルコンテンツにアクセスできるようにするのも効果的です。
学生や求職者に配布することで、企業の認知度を高め、将来の応募者に対しても長期的なブランドイメージを構築することができます。
また、プロフェッショナルで魅力的なパンフレットは、求職者にポジティブな印象を与え、企業への関心を高めるでしょう。
面接や説明会で繰り返し伝える必要情報をパンフレットにまとめることで、採用プロセスを効率化できます。詳細な情報を記載することで、求職者からの問い合わせを減らし、スムーズな選考プロセスが実現できます。
採用パンフレットには以上のような多くのメリットがあるのですが、一方で作成する際にはデメリットもあります。
・金銭的コストがかかる
・時間的コストがかかる
それぞれについて詳しく解説します。
具体的には「デザイン費用」「印刷費用」「配布費用」の3つがあります。
高品質なデザインを求める場合、プロのグラフィックデザイナーやデザイン会社に依頼する必要があるため、費用がかかります。
また、自社で作成するにしても、デザインソフトウェアやツールのライセンスが必要になることもあります。
パンフレットの印刷には紙質、カラー、部数などによって費用が異なります。大量に印刷するほど単価は下がりますが、初期投資が必要です。
高品質な印刷を行う業者を選ぶことで、コストが変動します。業者によって価格やサービス内容が異なるため、比較検討が必要です。
パンフレットを郵送で配布する場合、郵送料や封筒などのコストがかかります。 合同説明会やリクルートイベントでの配布には、参加費やブース設営費用などが発生することがあります。
具体的には「コンテンツ作成」「デザインと編集」「印刷と納品」に関するコストがかかります。
パンフレットに掲載する情報を収集するためには、社内の関係者や部門と連絡を取り、正確なデータを集める必要があります。これには時間がかかります。
企業のミッション、ビジョン、業務内容、福利厚生などを分かりやすく記述する作業も時間を要します。
デザイン案の作成から修正、最終確認まで、デザインのプロセスには時間がかかります。特に複数のステークホルダーが関わる場合、意見の調整や修正作業が長引くことがあります。
パンフレットの内容が正確であることを確認するために、校正や承認のプロセスも必要です。複数回のレビューや修正によって多くの時間を要するでしょう。
印刷業者によっては、パンフレットの印刷から納品までに時間がかかります。そのため、納品予定日を考慮して、早めに発注する必要があります。
印刷後のパンフレットの在庫管理や保管も時間がかかることがあります。特に大量に印刷する場合は、保管スペースや管理が必要です。
採用パンフレットに必ず記載しなければならない要素は決まっていませんが、ぜひ取り入れるべき要素は存在します。取り入れるべき要素を7つご紹介します。
・企業理念
・事業内容
・福利厚生・待遇面
・選考内容
・職場の先輩の声
・社外活動
・求職者へのメッセージ
それぞれについて詳しく解説します。
企業理念は、企業の基本的な価値観や使命、ビジョンを示すものです。企業がどのような目的で存在し、どのような方向に進もうとしているのかを示すことで、求職者に企業の文化や方針を理解してもらいます。
社長の言葉や企業理念が誕生した背景も含めてストーリー仕立てだと候補者が興味を持ちやすくなります。また、こういったストーリーは応募者にとってトリビア的な発見が多いのです。
企業が行っている事業や提供する製品・サービスについて詳細に説明します。どのような市場でどのような活動をしているのかを明確に示します。
求職者に企業の業務内容を理解してもらい、自分がどのような仕事をすることになるのかをイメージできるようにします。
福利厚生や給与、賞与、休暇制度など、求職者が気にする待遇面について具体的に説明します。健康保険、年金制度、社員旅行などの情報も含めましょう。
求職者に企業の待遇を明確に伝え、応募の際の判断材料にしてもらいます。また、企業の働きやすさや社員への配慮を示すことができます。
採用プロセスの流れや選考基準、面接の形式などについて詳細に説明します。応募から採用までの具体的なステップを示します。
求職者が選考過程を理解し、準備をしやすくするためです。また、透明性を持たせることで求職者の不安を軽減します。
現役社員や職場の先輩によるインタビューやコメントを掲載し、実際の働き方や職場の雰囲気を伝えます。
社員にインタビューする際は、やりがいや働き方だけでなく、この会社で働いて辛かったことも聞くとよいでしょう。先輩の体験談は、求職者にとって信頼性のある情報源となります。
企業が行っている社会貢献活動や業界内での活動、企業のイベントなどについて紹介します。企業の社会的責任や外部への貢献を示し、企業のブランドイメージや価値観を伝えます。
企業の採用担当者や経営者から求職者へのメッセージを掲載します。企業が求める人物像や、働く上での期待や希望を伝えます。
求職者に対して企業の期待やメッセージを直接伝えることで、企業との接点を作り、応募意欲を高めることができます。
では、採用パンフレットを作成する際の手順について説明します。主なステップは6つあります。
まず、採用ターゲットを明確にします。求職者の属性(新卒、中途採用、専門職など)を明確にし、それに応じた内容とアプローチ戦略を決定します。
採用ターゲットに応じたポイントについて知りたい方はこちらの記事をご覧ください!
■採用課題とは?調査分析方法、採用ターゲットに応じたポイントを解説
パンフレットの目的を明確にし、目的に最適なコンテンツを決めていきます。例えば、企業の魅力を伝える、求職者の関心を引く、具体的な応募を促すなど。
集めた情報を基に、わかりやすく魅力的な文章を作成します。ストーリー性を持たせることが重要です。
最後に、テキストやデザインの誤字脱字、内容の整合性をチェックします。社内の関係者や第三者に内容を確認してもらい、フィードバックを収集します。フィードバックを基に、内容やデザインの修正を行いましょう。
採用パンフレットの目的とコンテンツが決定したら、スケジュールを設定します。制作期間は内容量にもよりますが、平均して約3ヶ月かかります。
現状の就活ルールでは、3月に会社説明会などの広報活動が解禁され、6月からは面接などの選考活動が開始されることが規定されています。このスケジュールに基づいて、採用パンフレットの作成スケジュールを組むことが重要です。近年は採用活動を前倒しで行う企業も増えているため、自社の採用スケジュールに合わせて進めましょう。
自社にクリエイターがいない場合は、制作会社に依頼する必要があります。採用パンフレットは一般的なパンフレットと異なるため、採用や人事の知識を持ち、採用関連の制作に特化した制作会社に依頼することをおすすめします。
印刷を依頼する会社を選び、見積もりを取ります。また、必要部数を発注し、納期を確認しましょう。
デジタル版のPDFやウェブパンフレットも同時に作成し、求職者がオンラインでアクセスできるようにすることも重要です。
これらの準備が完了したら、いよいよ制作を開始します。
採用パンフレットを作成する際のポイントは主に5つあります。
・ターゲットに合わせた内容にする
・ストーリー仕立てにする
・見た目のデザインにこだわる
・ブランディング視点を持つ
・候補者が求めている事柄を記載する
新卒、中途、専門職など、ターゲットとなる求職者に合わせた内容で作成します。
また、求職者が知りたい情報(仕事内容、キャリアパス、福利厚生など)を具体的に記載します。
企業の成り立ちや背景をストーリー仕立てで伝えることで、求職者の興味を引きます。
実際に働いている社員のインタビューや体験談を掲載し、企業文化を伝えるのも良いでしょう。
視覚的に魅力的で、情報をわかりやすく伝えるデザインを心がけます。情報を整理し、読みやすいレイアウトを作成します。適切なフォントサイズや行間を設定し、過剰な情報を避けます。見出しや箇条書きを使って、重要な情報を強調し、スキャンしやすい構成にすることも重要です。
また、高品質な写真を使用することで、パンフレットの印象を向上させましょう。
ブランディング視点を取り入れることで、求職者に対して一貫したメッセージとイメージを伝え、企業の魅力を最大限にアピールできます。
採用ブランディングについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください!
■【事例付き】採用ブランディングとは?進め方・ポイント、発信手段を解説
候補者が求めている情報を記載しましょう。 応募手続きや必要書類、締め切りなど、応募方法を明確に記載します。最後に、候補者が質問や問い合わせをしやすいように、連絡先を記載しましょう。
ここで注意したいことは、自社が伝えたいことだけを掲載するのではなく、候補者が実際に求めている情報を提供することが重要です。どれだけ一生懸命作成しても、候補者が興味を持たない内容では、パンフレットは効果を発揮しません。
採用パンフレットに記載する情報は、候補者が本当に求めているものかを確認するために、面接時や会社説明会での逆質問から調査するのが有効です。
では、実際に採用パンフレットを活用している企業例をいくつかご紹介します。採用パンフレットを作成する場合は参考にすると良いでしょう。
出典:)「企業情報|キリンホールディングス」
一点目の事例はキリンホールディングス株式会社です。
新オフィスをリニューアルオープンする際に、イノベーション創発を目的とした共創空間をイメージし、「思いや熱意がつながるSTADIUM」を目指していることを読者に伝えています。実際の新オフィスの写真などを記載していることで視覚的に非常に効果的です。
また、社員の声を直筆で記載することで読者に思いが伝わりやすくなっています。
キリンホールディングス株式会社の採用パンフレットは以下になります。
出典:)「KIRIN RECRUITING BOOK|キリンホールディングス株式会社」
出典:)「みずほ証券について|みずほ証券」
二点目の事例はみずほ証券株式会社です。
みずほ銀行は採用パンフレットをわかりやすくインターネット上で公開していることが特徴です。「COMPANY」と「COLORS」二つパンフレットがあり、それぞれ全体的に青と赤で統一されたデザインは、スタイリッシュでプロフェッショナルな印象を持ちます。
片面に「目指していること」が大きく書かれており、反対側には「数字など詳細な情報」が載っていて分かりやすいデザインです。
他には、フレックスタイム制度や時短勤務などの勤務制度も紹介されており、多様な働き方を推進していることが読み取れます。
このように、社員がモチベーションを維持しながら長く働き続けられるような仕組みを目指していることが伝わります。
みずほ証券株式会社の採用パンフレットは以下になります。
出典:)「Recruitment e-book 採用パンフレット|みずほ証券株式会社」
出典:)「Recruitment e-book 採用パンフレット|みずほ証券株式会社」
出典:)「New Group Mission|株式会社メルカリ」
三点目の事例は株式会社メルカリです。
日本人社員だけではなく、外国人社員の声も取り入れることで、外国人採用に力を入れていることが読み取れます。
また、ポジションごとに社員の声を記載していることで、より詳細な情報を読者に伝えることに成功しています。
株式会社メルカリの採用パンフレットは以下になります。
出典:)「新卒採用ポジション紹介資料|株式会社メルカリ」
戦略的に進めることで、採用パンフレットは単なる情報提供ツールではなく、企業の魅力を求職者に伝え、優れた人材の獲得につなげる強力なブランディングツールとなります。
パンフレット制作の際は、ポイントや活用事例を参考にし、ブランディング視点を持って戦略的に進めていくことが重要です。