近年、「オウンドメディアリクルーティング」を実施する企業が増えています。
この取り組みは、企業のブランドイメージを強化し、求職者との関係を深めるための効果的な手法として注目されています。
そこで今回は、
などを解説します。
オウンドメディアリクルーティングとは、自社が所有するメディア(ウェブサイト、ブログ、SNS、メールマガジンなど)を活用して採用活動を行う手法です。この手法では、自社のメディアを通じてターゲットとなる求職者に直接アプローチし、企業の魅力やビジョン、文化を伝えることが目的です。
Twitter、Instagram、Facebook、YouTubeアカウントなどのメディアも広義として該当します。
オウンドメディアリクルーティングが注目されている背景には、どのような要因があるのでしょうか。
以下2つの要因は、企業の採用活動における新しいアプローチとして、オウンドメディアリクルーティングが効果的であることを示しています。
デジタル化とグローバル化の進展により、人材の選択肢が広がり、企業間の競争が激化しています。優秀な人材は多くの企業からスカウトやオファーを受けることができるため、企業はより魅力的な条件や独自のアプローチを提供しなければなりません。
また、 技術や業界の進化に伴い、必要とされるスキルや知識が高度化・専門化しています。そのため、特定のスキルセットや経験を持つ候補者を見つけることが難しくなり、採用活動が困難になっています。
近年、労働に対する価値観は多様化しており、これが採用活動や企業のリクルーティング戦略に影響を与えています。
以前は一般的にオフィスでのフルタイム勤務が標準でしたが、最近ではリモートワーク、フレックスタイム、パートタイム勤務など、働き方の選択肢が増えています。これにより、求職者は自分のライフスタイルや価値観に合った働き方を求めるようになっています。
このように、働き方の柔軟性とともに、仕事とプライベートのバランスを重視する求職者が増えています。健康や家庭、趣味など、仕事以外の面での充実感を重視する傾向があります。
また、 求職者は企業の文化や価値観に大きな関心を持ち、自分の価値観と一致する企業で働きたいと考えています。企業のミッション、ビジョン、価値観が自身の価値観と合致しているかどうかを重視する求職者が多くなっています。
オウンドメディアリクルーティングを実施することのメリットについて説明します。
メリットは以下4つあります。
・ミスマッチを減らし、自社に適した人材を採用できる
・自社認知度の向上に繋げられる
・転職潜在層にアピールできる
・データを蓄積できる
それぞれについて詳しく解説します。
自社のメディアを利用することで、特定の業界やスキルセットに合った求職者をターゲットにすることができます。特定のコンテンツや記事を通じて、求める人材の関心を引くことができます。
求職者が自社のコンテンツに触れることで、自分が企業の文化や価値観に合うかどうかを判断できるため、企業とマッチする応募者が集まりやすくなります。
オウンドメディアを通じて、企業の文化や価値観、働き方について詳しく発信できます。求職者に自社のブランドを理解してもらい、ブランド価値を高めることができます。
転職潜在層とは、現時点では転職活動をしていないものの、より良いキャリアの機会があれば転職を考える可能性がある人々を指します。
転職潜在層は、転職を急いでいないため、企業に対してより慎重にアプローチする傾向があります。オウンドメディアを通じて継続的に価値ある情報を提供することで、企業に対する信頼感や共感が生まれるでしょう。
将来的に転職を考えた際に、第一候補として企業が自然と候補に上がる可能性が高まります。
蓄積されたデータを分析することで、ターゲット層の行動パターンや興味関心をより深く理解できます。たとえば、特定の職種やキャリアステージにある人々がどのようなコンテンツを好むのかを知ることができます。
このように、過去の採用活動で蓄積したデータは、将来の採用活動に役立てることができます。より的確なコンテンツを作成し、ターゲット層に効果的にアプローチすることが可能になります。
オウンドメディアリクルーティングには多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットも存在します。
デメリットは以下3つです。
・軌道にのるまでは成果が出にくい
・短期的にみるとコストがかかる
・マーケティング知識やwebサイトに関する知識が必要
それぞれについて詳しく解説します。
オウンドメディアリクルーティングは、長期的な戦略として設計されることが多いため、すぐに目に見える成果を得るのは難しいです。コンテンツを作成し、公開してから求職者に広く認知されるまでには時間がかかります。
また、ターゲット層に対してどのようなコンテンツが最も効果的であるかを見極めるためには、試行錯誤が必要です。そのため、短期間での結果を期待すると、思うような成果が得られず、フラストレーションがたまる可能性があります。
オウンドメディアを立ち上げ、運営するには、コンテンツの制作、ウェブサイトの開発・保守、SEO対策など、初期投資が必要です。特に、質の高いコンテンツを継続的に提供するためには、ライター、デザイナー、マーケティング担当者などのリソースが必要であり、それに伴うコストもかかります。
また、効果が出るまでに時間がかかるため、短期的にはコストばかりが先行し、リターンが見えにくい状況が生じやすいです。
オウンドメディアリクルーティングを成功させるためには、マーケティングやWebサイト運営に関する専門的な知識が不可欠です。具体的には、SEO対策、コンテンツマーケティング、データ分析、SNSの運用、さらには効果的なデザインやユーザーエクスペリエンス(UX)に関する理解が求められます。
これらの知識が不足している場合、外部の専門家やエージェンシーに依頼することも考えられますが、そうするとさらにコストがかさむことになります。
掲載すべきコンテンツとして以下のようなことが挙げられます。
それぞれについて詳しく解説します。
具体的な業務内容を紹介するコンテンツは、求職者が実際にどのような仕事をすることになるのかをイメージしやすくするために重要です。特に、日々の業務フローやプロジェクトの進め方などを詳細に説明することで、応募者の期待と実際の仕事内容とのギャップを減らすことができます。
社員の声を直接伝えるインタビューは、企業のリアルな雰囲気や文化を伝えるのに最適です。どのようなバックグラウンドを持った社員が働いているのか、どのようなキャリアパスがあるのか、また、日常的な業務のやりがいやチャレンジなどを伝えることで、求職者が自分を重ねやすくなります。
また、成功事例やキャリアアップのストーリーを含めると、より魅力的なコンテンツとなります。
企業の社内制度や働き方に関する情報は、求職者がその企業でのライフスタイルをイメージするために重要です。
例えば、フレックスタイム制、リモートワークの制度、育児休暇やキャリア開発支援制度など、働きやすさや社員をサポートする取り組みを紹介することで、企業が社員を大切にしていることをアピールできます。
創業者や経営者のメッセージやインタビューを通じて、企業のビジョンやミッション、経営方針を伝えることは、企業の理念に共感する人材を引き寄せるのに役立ちます。
経営者がどのような想いで企業を立ち上げ、どのような未来を描いているのかを伝えることで、求職者の共感を呼び、企業に対する信頼感を高めることができます。
自社のプロダクトやサービスに対する情熱や、社会に与えるインパクトを伝えるコンテンツは、企業の価値観を明確に示すために有効です。
なぜそのプロダクトやサービスが重要なのか、どのような問題を解決しているのか、そしてそれを実現するためにどのような努力がされているのかを伝えることで、求職者が企業の使命に共感しやすくなります。
社内イベントやワークショップなどの取り組みを紹介するコンテンツは、企業の活気や社員同士のつながり、企業文化を具体的に伝えるために役立ちます。
イベントの内容だけでなく、そこに参加した社員の感想や、イベントを通じて得られた成果なども紹介することで、企業の魅力を多角的にアピールすることができます。
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【事例付き】採用ブランディングとは?進め方・ポイント、発信手段を解説
オウンドメディアリクルーティングを始めるための手順は、戦略の立案から実際の運営まで、段階的に進めることが重要です。以下に詳しく説明します。
まず、オウンドメディアリクルーティングを通じて何を達成したいのか、具体的な目的を設定します。
例えば、「優秀なエンジニアを採用したい」「企業文化を広く知ってもらいたい」などです。
同時に、どのようなターゲット層に向けて発信するのかも明確にします。これには、ターゲット層の職種、キャリアステージ、関心分野などを詳しく分析することが含まれます。
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次に、オウンドメディアをどのプラットフォームで展開するかを決定します。企業の公式ウェブサイトの一部としてオウンドメディアを運営することが多いですが、専用のブログサイトやYouTubeチャンネル、SNSアカウントなど、ターゲット層に最もリーチしやすいプラットフォームを選びましょう。
選定後、必要に応じてウェブサイトやブログの設計・構築を行います。
次にどのようなコンテンツを発信するかの戦略を立てます。上記で解説したコンテンツを参考にしましょう。
プラットフォームが整ったら、具体的なコンテンツの制作に取りかかります。ここでは、社内のリソースを活用する場合もあれば、外部のライターやデザイナーに依頼する場合もあります。
コンテンツは、ターゲット層にとって有益で興味深いものであることを心がけ、企業の魅力を的確に伝えるものにします。
また、SEO対策を意識した記事の構成やキーワード選定も重要です。
制作したコンテンツをプラットフォームに公開します。公開後は、SNSやメールマガジン、外部メディアとの連携などを通じて、コンテンツを拡散し、広くターゲット層にリーチします。
また、Google Analyticsなどの分析ツールを使って、コンテンツのパフォーマンスを定期的にモニタリングし、どのコンテンツがどのくらいの効果を発揮しているかを分析します。
コンテンツ公開後、蓄積されたデータを分析し、効果を測定します。どのコンテンツが最も読まれているか、どのページが最も応募を促進しているか、求職者がどのようにオウンドメディアにたどり着いたかなどを詳細に分析します。
このデータを基に、次のコンテンツ制作や戦略にフィードバックを行い、継続的な改善を図ります。
オウンドメディアリクルーティングは長期的な取り組みが求められます。コンテンツの質を維持しつつ、定期的に新しい情報を提供し続けるための運営計画を立てます。
また、時には方向性の見直しや新しい戦略の導入も必要となるため、柔軟に対応できる運営体制を整えましょう。
オウンドメディアリクルーティングの運用は、継続的にコンテンツを発信し、データを分析して改善を行うサイクルを維持することが重要です。
次に、運用方法を3つ詳しく説明します。
・定期的なコンテンツの更新と拡充
・SEO対策
・SNSとの連携
それぞれについて詳しく解説します。
オウンドメディアの効果を最大化するためには、定期的に新しいコンテンツを公開し続けることが重要です。以下3つのポイントが含まれます。
あらかじめコンテンツの公開スケジュールを立て、定期的な更新を確保します。週単位や月単位でどのテーマの記事を公開するのか、どのようなターゲットに向けたコンテンツを発信するのかを計画します。
同じ内容に偏らないように、業務内容の紹介、社員インタビュー、企業文化の紹介など、さまざまなトピックをバランスよく発信します。動画、記事、インフォグラフィックスなど、形式も多様化させると良いでしょう。
採用の繁忙期や、業界のトレンドに合わせたコンテンツを提供することで、求職者の関心を引きやすくします。例えば、新卒採用シーズンには新卒向けの特集記事を、年末にはその年の企業活動を振り返る記事などを用意します。
コンテンツをより多くの求職者に届けるためには、SEO(検索エンジン最適化)が重要です。以下3つのポイントが含まれます。
求職者が検索エンジンで利用しそうなキーワードを調査し、それに基づいてコンテンツを最適化します。タイトルや見出し、本文中に適切にキーワードを配置し、検索エンジンで上位に表示されやすくします。
オウンドメディア内の各コンテンツが相互にリンクするように工夫し、ユーザーが興味を持つ他の記事にも自然に誘導できるようにします。これにより、サイト内の滞在時間を延ばし、求職者により深い理解を促すことができます。
Google AnalyticsやSearch Consoleなどのツールを使い、どのコンテンツがどのくらいのトラフィックを獲得しているのか、どのページが最も読まれているのかを定期的にチェックします。これにより、効果的なコンテンツを見極め、今後の戦略に反映させることができます。
オウンドメディアのコンテンツは、SNSを通じてさらに拡散し、ターゲット層に届けることができます。以下3つのポイントが含まれます。
新しいコンテンツが公開されるたびに、企業の公式SNSアカウントで共有します。SNSごとに最適な投稿形式や時間帯を考慮し、より多くのエンゲージメントを獲得します。
Facebook、Twitter、LinkedInなど、プラットフォームごとに異なるユーザー層がいるため、それぞれに適したメッセージングやコンテンツの見せ方を工夫します。
SNS上でフォロワーとのやり取りを通じて、企業のファンや支持者を増やし、企業文化や採用情報を広めるコミュニティを形成します。フォロワーのフィードバックをもとに、コンテンツの改善にも役立てます。
オウンドメディアリクルーティングの成功事例を2つ紹介します。
フリマアプリのサービスを運営する株式会社メルカリは、採用オウンドメディア「メルカン」を運営しています。
メルカンを運営する上で大切にしていることは3つ挙げられます。
メルカンを運営する際に、この3つを大切にすることでバリューやカルチャーを知っていただくツールとして重要な役割を果たしています。
このように、メルカリのカルチャーそのものを体現することに成功しています。
参照:)「BUSINESS INSIDER JAPAN 「メルカン」はメルカリのカルチャーそのもの ── 理想の採用に貢献するオウンドメディアのあり方とは」
日本マクドナルドはFacebook、Instagram、TwitterなどのSNSを積極的に活用し、オウンドメディアのコンテンツを拡散しています。SNS上でのユーザーとのインタラクションを通じて、より多くの消費者にコンテンツを届けると同時に、リアルタイムでのフィードバックを得ることができています。
また、従業員のインタビューやキャリアストーリーを紹介することで、社内の雰囲気や働きがいを伝えています。これは、求職者に対してマクドナルドで働く魅力を伝える効果的な手段となっています。
参照:)「公式アルバイト・パート募集中|日本マクドナルド株式会社」
いかがでしたでしょうか。オウンドメディアリクルーティングは、企業が自社の魅力を直接伝え、求職者との関係を構築するための強力なツールです。成功するために、戦略的なコンテンツ運用と継続的な改善をしましょう。
本記事を参考にオウンドメディアリクルーティングの活用を検討していただければ幸いです!