売り手市場化が続く中で、採用がなかなか上手くいっていない企業は多くあるのではないでしょうか。
そのような企業では、以下の悩みを抱えている場合が多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では「採用市場の現状」や「採用が上手くいかない原因」、「採用が上手くいかない場合の解決策」を解説します。ぜひ参考にしてください。
採用活動を見直す上では、現在の採用市場についての見識を深めておくことが非常に重要となります。下のグラフは、令和5年度までの求人数や求職者数、求人倍率のそれぞれの推移を示したものになります。
求人数・求職者数・求人倍率の推移
引用元:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年9月分)について」
このグラフから読み取れることは「コロナ禍の影響で一時的に減少たが、その後は1を超え続けていること」です。
この数字は求職者よりも求人数の方が多いという状況を示しており、全産業で相当数の求人が出ていることを示唆しています。つまり、採用市場は依然として「売り手市場」であると言えます。自社が求める優秀な人材を確保するためには、効果的な採用活動が欠かせないのといえます。
一方、求人が増えると、条件の良い仕事への転職を考える人も増える傾向にあるため、今後も転職市場は活気づくでしょう。より好条件を求める優秀な人材が転職を考えるケースも多いため、各企業の採用活動の質がそれぞれの人材の質を定めると考えられます。
採用計画を設計する段階における、採用が上手くいかない原因を紹介します。
採用計画の策定において、最初のステップとして重要なのは、どのような人材が必要であるかを明確にすることになります。この人材要件は、採用を行う部門のニーズに基づいて決定されるべきことです。しかし、採用部門と人事部門の間で適切な調整が行われない場合においては、採用活動全体が円滑に進まないことになりかねません。その結果必要な人材を採用できなかったり、ターゲットとする人材からの応募が集まらなかったりするリスクが生じてしまいます。
採用計画を立てる際には、現場社員と人事担当者が緊密に連携し、必要とされる人材の特性を深く理解することが不可欠です。自社の経営戦略や事業計画に基づき、具体的にどのような人材を求めているのかを明確にしましょう。単に「コミュニケーション能力に優れている」「経験が豊富である」といった抽象的な要件ではなく、自社の仕事内容や役割に合わせた具体的な要件を定義することが重要となってきます。その上で、求める人材像(ペルソナ)を明確に設定し、それに基づいて採用活動を進めることが求められているのです。
求める人物像が明確になったら、次にその人物に適した採用手法を選択することが必要です。採用手法には多様な選択肢があり、例えば以下のような方法があります。
各手法にはそれぞれメリットとデメリットがあり、アプローチできる求職者の層も異なります。そのため、自社において最適な採用手法を選択しないと、ターゲットとする人材に十分にアプローチできない可能性があるといえるでしょう。
まず各採用手法の特徴やメリット、デメリットを理解することが重要になります。自社が求める人物像に最適な手法を選ぶことで、ターゲットとしている人材に対して効果的なアプローチが可能となります。例えばベンチャー企業であれば、ベンチャー志向の人材が集まる求人サイトを利用するとよいと考えられます。また特定のスキルを持ったエンジニアを採用したい場合は、ウェブ媒体や自社での勉強会を活用するなど、ターゲットに合わせた集客方法を検討することが有効になるといえるでしょう。
人材要件を設定した後に、必要な人材をいつまでに、どの程度の数、どのような手法で採用するのかの計画を立てる段階に移っていきます。このとき、採用にかかる予算や期間、人員の割り当てについて、現実的な面を考慮していく必要があります。採用するポジションや人材によって、最適な採用手法や媒体は異なりますが、限られたリソースを用いて完璧に対応することは難しい場合が多いです。そのため、非現実的な計画が採用活動の失敗を招く原因となってしまうことがしばしば見受けられるといえます。
まず過去の採用活動の記録を見直し、どの部分に欠陥があったのかを洗い出すことが重要になるでしょう。次に現場社員へのヒアリングを十分に行い、実際のニーズやリソースに基づいた現実的な計画を立てていくべきだといえます。特に、現場社員との意識のすり合わせを行うことで、よりスムーズな採用活動が可能となります。採用ペルソナの設定に際しても、現場の声を反映させることで、より効果的な採用戦略を策定することが可能となるでしょう。
採用開始時において採用が上手くいかない原因をいくつか解説します。主に3点あります。
優秀な人材を確保するためには、まず十分な母集団を形成することが欠かせません。母集団とは、採用活動のターゲットとなる求職者の集団を指します。この母集団が小さいと、質の高い人材を見つけることが困難になります。また、母集団が小さければ、小規模な母集団の中で求める条件に合った人材や、実際に自社で働きたいと考える人材を探し出すことが一層難しくなります。結果として、採用の質が低下し、採用活動が思うように進まない事態に陥ってしまうのです。
数年前までは採用市場が買い手市場であり、求職者が有利な立場にありました。しかし、現在は求人倍率が高い売り手市場に変化しており、質と量の両方を兼ね備えた母集団形成が求められます。このいずれかが欠けてしまうと、優秀な人材を確保することが一層困難になるでしょう。
採用担当者やリソースが不足している企業では、母集団形成のための戦略が不十分な場合が多く見受けられます。特に知名度の低い企業では、ホームページや求人広告を単に公開して待っているだけでは、効果が限られてしまいます。特に専門職種や人気のある人材をターゲットとする場合、積極的なアプローチが必要不可欠です。具体的な対策としては、ダイレクトリクルーティングやスカウトといった手法を用いて、企業側から積極的に候補者にアプローチすることが効果的です。
さらに、以下のポイントに注意を払いながら母集団を形成していくことが求められます。
このような戦略を導入することで、質の高い母集団を形成し、求める人材を効果的に確保することが可能となります。
求職者にとって魅力的でなければ、どれだけ求人を出しても応募が集まらず、また集まったとしても自社にマッチした人材が見つからないことが多いです。例えば、高い年収を提示しても、それが実際に現実的なものかどうかを求職者が判断するのは難しいでしょう。求職者は、基本給や残業代など具体的で正確な情報を求めています。
また、求人情報に記載される内容やビジュアルの質が低ければ、それだけで求職者の関心を失う原因となります。特に、文法の誤りや暗い写真、社員が少なく見える写真などは、求人内容の魅力を大きく損なう要因です。写真は第一印象を左右する重要な要素であるため、社内の雰囲気や働きやすさを正確に伝えるためには、明るく親しみやすい写真を使用することが求められます。
求人情報の作成においては、業界平均と比較した給与水準や福利厚生など、求職者が関心を持つ情報を正確に提示することが重要です。これにより、求職者が競合他社との比較を行いやすくなります。また、企業の文化や価値観、ビジョンなど、自社独自の魅力を強調することで、他社との差別化を図ることができます。
さらに、求人情報には簡潔で印象に残るキーワードを使用し、明るく親しみやすい写真を掲載することが効果的です。社員の姿が写っている写真を多く使用することで、求職者に親近感を与え、企業への関心を高めることができます。
最近では、企業が会社概要や採用情報を求職者向けに示す「採用ピッチ資料」を作成するケースも増えています。この資料を活用することで、企業の認知度を高め、求職者とのマッチ度を向上させるとともに、採用コストの削減も期待できます。
自社の良い面をただ伝えるだけでは、競争の激しい市場において求職者の心に響かないことが多いです。特に現在の「売り手市場」では、優秀な人材が競合他社との争奪戦になることが避けられません。競合他社がどのような強みを持ち、どのような採用戦略を展開しているのかを把握しないまま、自社の宣伝を行うだけでは、求職者に自社の魅力を正しく理解してもらえない可能性が高まります。
採用競争は他社との競争だけでなく、事業競争も含まれます。まず、どの企業が採用競争のライバルなのかを明確にし、その企業の採用活動や戦略を分析することが必要です。競合他社を分析する際には、以下のポイントに注目して比較することが重要です。
さらに、事業競争においては、自社の営業担当者から情報を取得し、競合他社の動向を把握することも有効です。このような情報を基に、採用戦略を練り直し、求職者に対して自社の魅力をより強く訴求することが重要です。
選考時において採用が上手くいかない原因をいくつか解説します。主に2点あります。
選考プロセスが遅延してしまう主な原因は、応募から最終決定に至るまでの手続きが煩雑であったり、複数のステップにわたり多くの時間を要したりすることです。特に、各ステップ間での判断や意思決定が遅れることにより、次の選考ステップまでの間隔が空いてしまうことが問題となります。
このような遅延は、求職者に不安を与えるだけでなく、「採用プロセスが遅い=会社の意思決定が遅い」といったネガティブな印象を抱かせる原因にもなります。また、他の企業が同じ求職者に迅速にアプローチする機会を提供してしまい、結果的に競合他社に人材を奪われてしまうリスクも増大します。
選考プロセスを効率化するために、まずは応募から採用決定までの手続きを見直し、可能な限りステップを簡素化することが求められます。たとえば、複数の選考ステップを一度に行う「ワンデイ選考」や、リモート面接の導入によって、プロセス全体のリードタイムを短縮することが有効です。
また、判断に時間がかかる原因として、選考に関わる複数の担当者間での意見調整や意思決定が滞る場合があります。これを防ぐために、事前に採用基準を明確にし、面接官や採用責任者との密なコミュニケーションを図り、意思決定の迅速化を促す仕組みを整えることが重要です。
面接は、求職者との直接的なコミュニケーションを通じて、彼らのスキルや性格、人柄を深く理解するための非常に重要な機会です。しかし、面接官のスキルが不足していると、適切な判断ができず、優れた人材を見逃す可能性が高くなります。たとえば、求職者の表面的な印象だけにとらわれたり、バイアスがかかった質問をしたりすることで、求職者の本質を見抜くことが難しくなります。
さらに、面接官は自社の魅力を正しく伝える役割も担っていますが、これが十分に行われないと、求職者に対して自社に対する興味を喚起できず、他社に流れてしまう可能性があります。
面接官のスキル向上を図るためには、以下の取り組みが有効です。
これらの対策を講じることで、選考プロセスの質を向上させ、求職者とのミスマッチを減らし、より適切な人材を採用することが可能になります。
内定を出す際には、採用がうまくいかない原因がいくつか潜んでいます。特に、以下の2点が大きな影響を与える可能性があります。
求職者が最終面接を終えた後、結果を早く知りたいと強く望んでいるのは当然です。特に新卒採用では、多くの学生が複数の企業に同時に応募しているため、スピード感が重要です。また、中途採用の場合でも、求職者はより良い条件の求人を探しており、迅速な結果通知を求める傾向があります。
内定通知が遅れると、せっかくの優秀な人材が他社に取られてしまうリスクが高まります。また、遅延によって入社意欲が低下し、最終的には内定辞退につながる可能性もあります。
選考が終了した段階で、内定までのプロセスを最速で進めるための内部調整が不可欠です。理想的には、選考開始時点で、内定までのスケジュールを明確に提示し、求職者に安心感を与えることが重要です。具体的には、各選考ステップがどのように進むのか、結果通知が何日後に行われるのかを正確に伝えることで、求職者は他社の選考や現職との調整を行う際に参考にできます。このようなスケジュール管理が徹底されることで、採用プロセス全体の効率が向上し、求職者からの評価も高まるでしょう。
内定が出た後、内定者が「本当にこの企業で良いのだろうか」と感じることは珍しくありません。特に、内定までのプロセスで自社を十分に理解してもらう機会が少なかった場合や、内定通知の際に担当者の熱意が十分に伝わっていない場合、内定者の不安は増す一方です。その結果、内定辞退のリスクが高まることがあります。
内定者が企業の選考基準や自分が評価されたポイントを理解していないと、自己評価が低くなり、いわゆる「内定ブルー」に陥る可能性があります。
内定を出す際には、まず内定の理由や、企業がなぜその候補者を採用したいと考えているのかを明確に伝えることが重要です。これにより、候補者は自身の強みや価値を再確認でき、企業からの期待に対する満足感や喜びを感じるでしょう。さらに、企業側が率直に熱意を伝えることで、入社前の辞退リスクを大幅に軽減することができます。
内定通知後の内定フォローを行う段階において、採用が上手くいかなくなる原因があります。主に2点あります。
内定後のフォローアップは、人事部との面談や内定者懇談会などで行われることが一般的です。しかし、このフォローが受け身の姿勢で行われると、内定者は他社の積極的な魅力づけに惹かれてしまうことがあります。特に、人事部門だけがフォローを担当している場合、内定者は社内の実際の働き方ややりがいを十分に理解できず、他社への関心が高まる可能性があります。
採用担当者や配属予定部署のメンターなどが、積極的に内定者とコミュニケーションを取ることが重要です。定期的に連絡を取り合い、内定者が不安や悩みを気軽に相談できる環境を整えることで、企業への信頼感と親近感を高めることができます。具体的には、LINEやチャットツールなど、手軽にコミュニケーションが取れるツールを活用し、内定者との密な連絡を続けることが望ましいです。
内定者にとって、同期となる人々がどのような人物かを知ることは非常に重要です。特に、他社の内定者との交流が深まり、企業の実情を知る機会が少ないと、不安が募り、最終的には「他の企業の方が自分に合っているのではないか」と感じることがあります。この不安は新卒採用だけでなく、中途採用でも同様に生じる可能性があります。
内定を出した後、できるだけ早期に内定者同士の交流の場を設けることが効果的です。現役社員を交えた懇親会や、チームビルディングの活動を通じて、内定者が企業での仕事や環境をイメージしやすくすることが重要です。このような機会を提供することで、内定者の入社意欲をさらに高め、内定辞退を防ぐ効果が期待できます。
本記事では
などの悩みを抱えている方に向けて、「採用市場の現状」や「採用が上手くいかない原因」、「採用が上手くいかない場合の解決策」を解説しました。ぜひ参考にしてください。