有効求人倍率の上昇などによって、企業の採用活動は複雑化し、優秀な人材を確保するための競争が激化しており、成功させるためには専門知識と実践経験が必要です。
一方で、
・求める人材が採用できない
・採用に成功している企業の事例を知りたい
・採用戦略・採用広報について知りたい
など、さまざまな悩みを抱えている企業様も多いのではないでしょうか。。
本記事では、実際の事例とともに「採用戦略」や「採用広報」について「コツ」や「手法」をなど、幅広くご紹介します。
まずは採用の成功事例を企業別に8個紹介します。採用に成功している企業は自社の強みを上手く訴求しています。自社のリソースなども踏まえて、できそうなものを参考にしてください。
キャディ株式会社は、以下の三つの取り組みで、2021年2月には約80名だった従業員数を、わずか9ヶ月で160名増加させることに成功しています。
採用候補者からのフィードバックをもとに、情報をリサーチし、Webサイトの改善に取り組んでいます。また、「兆単位プラットフォームへの10の課題」と題した具体的な課題や業務内容を公開し、求職者に企業のビジョンをより明確に伝えています。
資金調達成功時のプレスリリースに採用リンクを掲載することで、自社サイトへのアクセスが2.5~3倍に増加しました。この手法により、より多くの求職者に企業の魅力を伝えることができています。
資金調達後には、投資家や社内メンバーが登壇するイベントを開催し、ビジョンや戦略を共有しています。これにより、企業文化や将来の展望に共感する人材を集め、定着率を高めることができています。
株式会社スタディストは、採用からオンボーディングまでのプロセスを見直し、個人の意欲(Will)と企業の必要性(Must)を継続的にすり合わせる仕組みを構築しました。これにより、従業員が定着する組織作りを実現しています。主な取り組みは以下の2つです。
企業が従業員に提供できる価値(EVP)を整理し、発信しています。採用サイトや開発ブログでEVPを積極的に発信することで、求職者とのミスマッチを防ぐ努力をしています。
選考フローを見直し、一次選考後に5〜10分の「マッチングインタビュー」を追加しています。このインタビューでは、候補者の転職軸トップ3を確認し、その希望に会社がどの程度応えられるかを誠実に説明しています。
入社後の「ポートフォリオ研修」では、新メンバーが自身の意欲やスキル、責任を言語化し、自己開示を促進する仕組みを整えています。また、継続的に1on1ミーティングを行い、「やりたいこと・できること・やるべきこと」の重なりを見つけています。
引用元:https://www.kyusyu-pearl.co.jp/
株式会社九州パール紙工は、販路拡大のためECサイトを開始しましたが、担当従業員の離職により運営が困難になり、特にコロナ禍での需要増に対応できず、高い離職率も課題でした。
解決するために、副業人材マッチングサービスを利用し、ECサイト運営やSNSの活用について専門知識を持つ副業人材を採用しました。これにより、若手従業員にノウハウを伝授し、販路拡大に成功しました。
具体的には、SNSの発信により毎年3~4名の高校生を順調に採用でき、離職率も低下し、社内の活性化につながりました。
クラスメソッド株式会社では、エンジニアが主体となってエンジニアを採用する仕組みが確立されています。求職者とのコミュニケーションを重視し、現場のチームメンバー全員が参加する実技試験や面接を通じて、求職者との接触機会を増やしています。
面接においては全員の同意がなければ採用を行わず、それぞれが採用の決定権を持っています。
さらに、リファラル採用を積極的に行い、同社の強みであるAWS関連技術を活かしたテックブログ「DevelopersIO」を通じて、採用チャネルを増やすだけでなく、技術力やエンジニアの成長過程、将来性を効果的にアピールしています。
このように、現場エンジニアとの時間を共有することにより、採用プロセスには時間がかかるものの、内定承諾率の向上やその後の離職率の低下に繋がっています。
株式会社doorsは、多様な事業展開により、多岐にわたるスキルを持つ人材の確保が課題として挙げられていました。
解決策するために、地域貢献活動やイベントを通じて企業の認知度を向上させ、地元の多様な人材を採用しました。特に若手に積極的に仕事を任せることで、意欲的な人材を引きつけることに成功しています。
結果として、インフラメンテナンス事業では1.5倍の増員に成功し、飲食事業でも必要な採用数を確保することができました。
株式会社エイチームは、2017年卒から2019年卒にかけて内定承諾率を50%から80%に向上させることに成功しました。その具体的な取り組みとして、全ての説明会をオンライン化し、3ヶ月以内に内定を出すプロセスを導入しました。
説明会をオンライン化することで、求職者に伝える情報量が増加し、選考への移行率が向上しました。また、内定を早期に出すことで内定承諾率を30%も向上させることができました。
引用元:https://www.uzabase.com/jp/
株式会社ユーザーベースは、SPEEDAやNewsPicksなどのサービスを提供する企業で、求職者に入社後のイメージを効果的に伝えることが課題となっていました。同社は、この課題を解決するためにスカウトメールの返信率をKPIとして設定し、その改善に取り組みました。
具体的には、スカウトメールにポジションに関する記事コンテンツのURLを添付することで、返信率を大幅に向上させることに成功しました。
株式会社ツクルバは「『場の発明』を通じて欲しい未来をつくる」というミッションを掲げ、中古・リノベーション住宅の流通プラットフォームを提供しています。同社では、ダイレクトリクルーティングの採用チャネルにおいて、面談参加者数をKPIとして設定しています。
スカウト送信数をKPIとするのではなく、実際の面談参加者数を重視することで、単にスカウトを送信することが目的化しないようにしています。一人一人に熱意のこもったメッセージを送信したことが、成功の要因となっています。
引用元:https://www.asoview.co.jp/
アソビュー株式会社は、「1次面談数」をKPIとして設定しており、面談数を増やすために多くの担当者を確保する必要があるため、採用活動の情報を社内で積極的に共有し、コミュニケーションを密に取っていました。
また、各KPIに基づくデータ分析を行い、採用プロセスのどの段階に問題があるのかを検証し、その改善に取り組んでいました。KPIを活用してPDCAを効果的に回したことが、採用成功の要因となっています。
ここまで、様々な業種の採用の成功事例をご紹介してきました。ここでは、これらの事例に共通する「採用を成功させるコツ」について以下の4つのステップに分けて解説します。
・採用戦略の立案
・母集団形成
・選考
・内定後の対応
まず、採用戦略を立案することから始めましょう。これにより、採用活動の基盤をしっかりと固め、成功へと導くことができます。
そもそも採用戦略とは、企業が求める人材を確保するために立てる計画のことを指します。企業の成長には、優秀な人材の確保が不可欠であり、採用戦略はそのための重要な手段です。これは単なる一回限りの採用活動にとどまらず、組織全体の長期的な成功を目指すものです。
しかし、労働人口の減少や売り手市場が続く現在の日本では、単に求人を出すだけでは、理想的な人材を確保することは難しいでしょう。具体的には、「どのような人材を、何人、いつまでに採用したいのか」という項目を明確に設定することが必要です。
言い換えれば、事業計画や中期経営計画に基づいて、採用の基本方針を社内で確立することが、企業の成長に直結するのです。採用戦略については後ほど詳しく解説します。
規模の小さい企業の採用過程における最大の課題は、応募者数の確保です。ここでは、採用広報が重要な役割を果たします。
採用広報では、自社ウェブサイトの充実や採用専用ページの作成、SNSの活用などが効果的です。これらは低コストで実施でき、応募者との接触機会を増やすことで、入社決定時に良い影響を与えることができます。
また、採用広報を通じて求める人材像や社風を明確に伝えることで、入社後のミスマッチを防ぐ効果も期待できます。採用広報についても後ほど詳しく解説します。
候補者が応募した際には、迅速に対応することが求められます。転職意欲が高い候補者は複数の企業を検討しているため、返信が遅れると応募意欲が低下する可能性があります。
面接日時が確定した後は、積極的に情報提供を行いましょう。例えば、面接日時確定メールに「面接までにぜひご覧ください」として、採用広報媒体のコンテンツリンクを添付すると効果的です。
面接は、双方が相手を理解するための重要な場です。候補者に自社をしっかりと理解してもらうため、見極めとアピールの計画を立てて面接を実施します。
また、来社時に候補者の意欲を損なわないよう、人事・採用担当者だけでなく従業員全体が良い印象を与えることを心掛けることが大切です。
面接後は、各担当者のフィードバックに一貫性を持たせるため、フィードバックルールを事前に設計しておきます。また、現状を正確に把握するために、面接後のヒアリングを行います。
具体的には、以下の点についてヒアリングを行いましょう。
・他社の選考状況
・自社に対する印象
・選考企業の志望順位とその理由
内定を出した後も、応募者に自社を選んでもらうための訴求が重要です。応募者が入社後の業務を具体的にイメージできるようにサポートしましょう。
また、経営方針やビジョンに共感してもらうことで、入社の決め手となることが多いです。入社の動機を明確にし、他社に流れることを防ぎましょう。
以下では、特に重要である採用戦略と採用広報について取り上げて解説します。
ここでは、採用を成功させるために特に重要な採用戦略の立て方やコツについて詳しく解説します。
採用活動は人事部に任せるだけではなく、現場や経営陣を巻き込んだ専用チームを構築しましょう。多様な視点を取り入れることで、会社全体としての統一した方針や方向性を確立できます。
戦略を立てる前に、現在の状況を正確に把握することが重要です。組織が抱える課題や目標、必要なスキルセットを明確にし、選考フローを可視化します。
具体的には、以下の点を分析します。
・面談から入社までのプロセス
・各フローにおける進捗率や見送り率
・現在利用している採用チャネルの効果
現状分析の結果を基に、どのようなスキルや経験を持つ人材が必要かを再確認し、ターゲットを明確にします。そのうえで、採用戦略を具体化します。
求職者とのコミュニケーションが最適かどうかを再検討します。
確認すべきポイントは以下の通りです。
・書類選考のスピード
・求職者のニーズに応じた情報提供
・面接時における自社の魅力の伝え方
計画的に人材を確保するために、適切な求人媒体を選定します。Web広告、求人誌、ホームページ、求人プラットフォームなど、求める人材が多い媒体を選びます。詳細は後ほど説明します。
会社全体としての人材採用の方針が定まったら、具体的な採用計画と目標を設定します。採用人数や選考フローを決定し、社内で共有します。また、期日を設けて効果を検証し、現場を巻き込んで成果を評価し改善点を話し合いましょう。
最後に、母集団形成の課題に対して効果的な採用広報について解説します。
採用広報にはさまざまなアプローチが考えられますが、シンプルに捉えると、採用ターゲットに情報を提供し、認知度を高め、興味を引き出すことが主な目的です。
そのため、「誰に」「どこで」「何を」伝えるかが最も重要な要素となります。それぞれについて詳しく解説します。
基本的に、情報の提供先は採用ターゲットです。例えば、マーケターを採用したい企業が、バックオフィスの人材に対して積極的に情報を発信することはありません。ここで重要なのは、ターゲット像をどこまで具体化するかという点です。
採用広報では、可能な限り具体的に、詳細に落とし込んだ複数のペルソナイメージを設定することが求められます。
転職動機は人それぞれ異なるため、ペルソナ設計を1パターンだけにしてしまうと、本来扱うべきコンテンツのトピックに漏れが生じる可能性があります。扱うべきコンテンツとは、採用ターゲットに対して訴求力のある内容を指しています。
具体的なペルソナ設計を行わないと、コンテンツの訴求力が低下し、特定の転職動機を持つターゲットへのアプローチが難しくなります。
まずは以下の項目について、複数のターゲットパターンを洗い出しましょう。
・経験
・スキル
・年齢
・経歴
・志向性(複数)
・転職動機(複数)
特に志向性や転職動機は、できるだけ多くのパターンを出すようにします。その後、各パターンごとにターゲットの自社に対するステータス(認知していない、検討中、興味を持っている)を定義します。目安としては、最低でも10パターンほど作成することをお勧めします。
ペルソナを複数設定した後は、「どこで」情報を展開するかを検討します。さまざまなメディア形態やプラットフォームが存在しますが、重要なのは採用ターゲットにリーチできるかどうかです。
・リーチ可能な総数が多い
・コストが適正
・運用が実現可能(工数など)
上記3つの条件を満たしている環境が理想的です。また、ペルソナ設計時に定義したターゲットの自社に対するステータスを考慮しながら、メディア選定を進めます。
例えば、ターゲットの多くが「検討中」や「興味を持っている」ステータスにある場合、直接リーチ可能なターゲットが少ないとしても、Googleの自然検索で見つかりやすいメディアが選択肢に入ることがあります。
Wantedlyなどはその典型例です。通常、Wantedlyはビジネスサイドの採用に適していると考えられますが、エンジニアのターゲットに新たな認知を得るためには最適とは言えません。
しかし、すでにエージェントや求人広告を通じて一次接触を終えたターゲットが「企業名 採用」などのキーワードでGoogle検索を行う場合、SEO対策が施されたプラットフォームを活用することで、二次接触フェーズでの接触を確実に実現することができます。
ここまで検討が進めば、あとは比較的シンプルです。ペルソナパターンで設定した志向性や転職動機をもとにトピックを作成し、必要に応じて分類します。
例として、カルチャー・技術・人について伝える場合を考えてみましょう。
カルチャー:
・ユーザーファーストであることを伝える(開発プロセス、ユーザーインタビューなど)
・事業を前提に技術環境を選定していることを伝える(CTOインタビュー、技術ブログ内の記事)
技術:
技術ブログ
人:
メンバーインタビュー
・ユーザーファーストのメッセージを伝えられるメンバー
・ボトムアップな社風を伝えるメッセージを発信できるメンバー
可能な限り、自社の訴求ポイントをカテゴリーごとに洗い出し、深掘りして具体化し、記事としてまとめることが重要です。
いかがでしたでしょうか。本記事では、実際の事例とともに採用戦略や採用広報について、そのコツや手法をなど、幅広くご紹介してきました。
採用活動を成功させるためには、ペルソナを明確に設定した上で、自社の強みをもとに魅力を発信することが大切です。現在の採用活動を見直す際に、ぜひ今回紹介した成功事例を参考にしてみてください!