エンジニア採用がかつてないほど難しくなっています。
IT業界の成長と共に需要が高まる一方で、優秀なエンジニアの数は依然として限られ、競争が激化しています。企業はダイレクトリクルーティングや人材紹介、求人広告、採用代行など様々な手法を駆使して人材獲得に奔走していますが、その多くが成果を上げるのに苦労しています。
本記事では、エンジニア採用を取り巻く外部および内部要因を探り、採用活動を成功に導くための効果的な戦略について詳しく解説します。
エンジニア採用が難しい理由には会社内の内部要因と会社外の外部要因があります。
まずは、外部的な要因から解説します。外部的な要因は主に4点挙げられます。
それぞれについて詳しく解説します。
下のグラフをご覧ください。このグラフはエンジニアの有効求人倍率を示しています。
エンジニアの有効求人倍率は3.8倍であるため、エンジニア1人に対して、求人が3.8社いるということになります。
参照:)一般職業紹介状況(令和6年6月分) 参考統計表 常用(除パート)
出典:)「ITエンジニアの有効求人倍率は?2024年8月の最新動向と採用のコツを解説|type」
エンジニアの数が不足している市場では、需要が供給を上回っており、企業が優秀なエンジニアを獲得するのが難しくなります。エンジニアは技術的な専門知識やスキルを持つため、その育成には時間がかかり、また経験豊富な人材の確保も難しいです。
少ない人材プールの中で、競争が激化し、企業は高い給与や優遇条件を提供しなければならない場合が多いです。
IT業界は成長が著しく、多くの企業がエンジニアの採用を強化しています。特に技術革新が進む分野や急成長しているスタートアップ企業は、多くのリソースを採用活動に投入しているため、競争が非常に激しくなっています。
優秀なエンジニアを獲得するための条件や待遇がより魅力的でなければならず、企業は採用コストの増加に直面しています。
リモートワークやフレックスタイム制度など、多様な働き方が浸透する中で、企業はこれに対応する必要があります。エンジニアは働く場所や時間に関して柔軟性を求める傾向が強く、企業がそれに応えられない場合、応募者が減少することがあります。
また、働き方の多様化に伴い、企業の文化や働き方を伝えることが難しくなり、採用活動に影響を与えることもあります。
最近では、社員が転職する頻度が減少し、長期間同じ企業に留まる傾向が強まっています。これは、企業が提供する福利厚生やキャリアパスに対する期待の変化、または経済的不確実性などが影響しています。
人材流動性の低下により、企業が新たにエンジニアを採用する機会が減少し、既存のエンジニアの定着に注力しなければならなくなることがあります。
次に、内部要因について説明します。主に以下6つあります。
それぞれについて詳しく解説します。
採用活動において「ペルソナ」とは、理想的な候補者の具体的な人物像のことを指します。ペルソナが明確でないと、企業が求めるスキルや経験、カルチャーフィットの基準が曖昧になり、採用活動が無駄になることがあります。
また、ターゲットとなるエンジニアに対して効果的なアプローチができないため、優秀な人材を逃してしまうリスクが高まります。
■採用ペルソナの作り方について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください!
採用ペルソナの作り方とは?項目や作成のコツ、フレームワークを解説
面接官がエンジニアリングに関する知識やスキルを十分に理解していないと、適切な評価ができず、優秀な候補者を見逃すことがあります。例えば、技術的な質問やテストの内容が不適切だったり、エンジニアとしての能力を適切に評価できなかったりするため、候補者が企業の技術レベルや採用プロセスに不信感を抱く可能性もあります。
エンジニアにとって魅力的な求人票とは、具体的な仕事内容やプロジェクト内容、使用技術、チーム構成、成長機会などが明確に記載されているものです。企業がこれらの情報を的確に伝えられない場合、エンジニアにとって興味を引く求人票にはならず、応募者が集まりにくくなります。
エンジニアは特に技術的な内容に関心が高いため、曖昧な表現や一般的なフレーズでは効果がありません。
企業が提示する条件や待遇が市場水準に見合わない、あるいはエンジニアが求める期待に応えられない場合、採用の合意が得られないことがあります。
特にエンジニアはスキルや経験に応じた報酬を重視する傾向が強く、企業が競争力のある給与や福利厚生、キャリアパスを提供できなければ、候補者を引き付けるのは難しくなります。
多くの企業が同じような条件でエンジニアを求めている中で、自社の強みや独自性が明確でない場合、競合他社との差別化が難しくなります。例えば、プロジェクトの魅力、技術的な挑戦、企業文化、成長機会などが他社と比べて劣っている場合、候補者はより条件の良い企業を選ぶでしょう。
企業が何を持って他社と差別化できるのかを明確にし、伝えることが重要です。
採用プロセスが遅いと、優秀なエンジニアは他社でのオファーを受けてしまうことが多くなります。特にエンジニアリング分野では、優秀な人材は引く手あまたであるため、スピーディーな対応が求められます。
選考過程が複雑で時間がかかりすぎると、候補者の関心が薄れる原因となり、採用に至らないケースが増えます。
では、エンジニア採用を成功させるにはどのようなポイントを踏まえればよいのでしょうか。ポイントは以下8つあります。
それぞれについて詳しく解説します。
現在のビジネスニーズと将来の成長計画に基づき、必要な人数やスキルセットを確認します。具体的には、エンジニアが担うべきプロジェクトや技術領域に応じて、どのような人材が必要かを明確にします。
採用にかける予算を見直し、採用コストが適正であるかどうかを確認します。費用対効果を最大化するため、採用方法やチャネルを見直すことも重要です。
さらに、市場の変動やプロジェクトの開始時期に合わせて、採用スケジュールを調整します。例えば、競合が少ない時期に採用活動を集中させることで、優秀な人材を確保しやすくなります。
自社の魅力を整理し、候補者に効果的に伝えることは、採用活動を成功させる上で不可欠です。
自社の独自の文化や働き方、価値観を整理し、候補者に伝えます。特にエンジニアにとって重要な「自由度の高い開発環境」や「チームのコラボレーション文化」などをアピールします。
また、成長機会やキャリアパスを明確に示し、長期的な視点での魅力を伝えます。研修制度や新技術への取り組みを強調すると、学び続けたいエンジニアにとって魅力的になります。
さらに、働きやすい環境や充実した福利厚生を整理し、候補者にアピールしましょう。リモートワークの可否や柔軟な勤務時間制度なども、エンジニアにとって魅力的なポイントです。
必要な技術スキル、経験年数、専門分野などを具体的に定義します。例えば、特定のプログラミング言語やフレームワークの経験が重要な場合、その点を明確にします。
技術スキルだけでなく、チームワーク、問題解決能力、自社の文化にフィットするかどうかも重視します。候補者が自社の価値観に共感できるかどうかを確認します。
採用ブランディングとは、自社を「働きたい会社」として求職者にアピールするためのブランド構築です。これにより、優秀なエンジニアを引き寄せやすくなります。
自社のウェブサイトやオウンドメディア、SNSを通じて、企業の魅力や最新の情報を発信します。特にエンジニア向けに技術ブログや開発事例を紹介することで、技術力をアピールできます。
現場エンジニアの声や成功事例を発信し、リアルな働きがいを伝えましょう。社員インタビューやエンジニアのブログ記事などが効果的です。
■採用ブランディングについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください!
【事例付き】採用ブランディングとは?進め方・ポイント、発信手段を解説
採用活動に現場エンジニアの協力を得ることで、より適切な人材を採用することができます。
面接やスキルテストに現場エンジニアが参加し、技術的な適性を評価します。これにより、採用後のミスマッチを防ぐことができます。
また、現場エンジニアからの紹介を促進し、信頼できる候補者を見つける手段として活用できます。
現在の労働市場では、多様な働き方が求められており、正社員だけでなく、契約社員、フリーランス、パートタイムなど、さまざまな雇用形態が選ばれるようになっています。特にIT業界では、プロジェクト単位での雇用やリモートワークの需要が高まっています。そのため、正社員にこだわらない柔軟な採用戦略が必要です。
フリーランスのエンジニアは、特定のプロジェクトや業務に対して柔軟に対応できるため、リソースが限られている場合や特定の専門スキルが必要な場合に有効です。契約期間や業務範囲を明確に定めることで、双方にとってメリットのある関係を築けます。
エンジニアにとって、自身のスキルを継続的に伸ばせる環境は非常に重要なモチベーションとなります。技術の進歩が速いIT業界では、常に新しいスキルを学び、成長できる環境が求められます。こうした環境を提供することで、優秀な人材の採用や定着を促進できます。
IT業界では、優秀なエンジニアの争奪戦が激化しており、人気のある人材は複数の企業から同時にオファーを受けることが少なくありません。採用プロセスが遅いと、他社に先を越され、貴重な人材を逃してしまう可能性があります。
迅速な採用プロセスを確立することで、競合企業よりも先に優秀な人材を確保することができます。
採用手法について、以下の4点を紹介します。
それぞれについて詳しく解説します。
ダイレクトリクルーティングは、企業が直接候補者にアプローチする手法です。
企業の採用担当者やリクルーターが、LinkedInやビジネスSNS、専門家コミュニティ、ポートフォリオサイトなどのプラットフォームを利用して、求めるスキルや経験を持つエンジニアに直接連絡を取ります。
メリットとして、企業が求める具体的なスキルセットを持つ候補者にピンポイントでアプローチできるため、ミスマッチを減らし、より効率的に採用活動を行うことが可能です。
■ダイレクトリクルーティングサービスについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください!
【事例あり】中途のダイレクトリクルーティングとは?サービス9選を紹介!
人材紹介は、企業が人材紹介会社に採用業務を依頼し、適切な人材を紹介してもらう手法です。人材紹介会社は企業の要件に基づいて、事前に登録された候補者の中からマッチするエンジニアを選び、紹介します。
メリットとして、採用のプロが候補者のスクリーニングを行うため、質の高い人材を迅速に確保しやすいことが挙げられます。企業の採用担当者が行う時間や手間を省くことができるため、リソースの節約にもなります。
■採用代行と人材紹介の違いについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください!
採用代行と人材紹介7つの違い|料金体系や向いている企業を解説
求人広告は、企業が求人サイトやSNS、技術系コミュニティなどに求人情報を掲載する手法です。これにより、エンジニアを広く募集することができます。
メリットとして、比較的低コストで幅広い層にアプローチできるため、多くの応募者を集めやすいことが挙げられます。また、企業の知名度を上げたり、ブランディングに役立てたりすることもできます。
採用代行(RPO)は、企業が採用活動の一部または全部を外部の専門会社に委託する手法です。求人広告の掲載、スクリーニング、面接調整、オファー交渉などの業務を外部のプロフェッショナルに任せることができます。
メリットとして、採用の専門家がプロセス全体を効率的に管理するため、採用活動が迅速かつ効果的に行えることが挙げられます。また、企業のリソースを他の重要な業務に集中させることが可能です。
■採用代行について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください!
【5分で分かる】採用代行とは?費用、メリデメ、委託可能な業務を解説
エンジニアを採用するためにおすすめの採用代行サービスを5つ紹介します。
引用元:https://digireka-hr.jp/enjinia_saiyo_lp/
引用元:https://hear-rpo-lp.com/page
引用元:https://company.prorec.biz/
■おすすめの代行サービスについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください!
エンジニア採用代行サービス5選!導入のメリットや選定時の注意点を解説
エンジニア採用の成功事例を3つ紹介します。
引用:https://medcom.ne.jp/
1点目は、株式会社メドコムの事例です。同社は、医療をシステムでサポートする事業を行っています。同社は、人材紹介や採用媒体、Note、YouTubeを利用していましたが、エンジニア採用が0という状況でした。
とりわけ、noteやyoutubeのコンテンツが充実していないことが問題となっており、その改善に努めました。採用コンテンツを充実させ、スカウトメールや面接時に候補者へ送付したことで、エンジニアの企業理解が進み、結果3カ月〜半年間で、数名のエンジニア採用に成功しています。
やはり、テックブログや採用ピッチ資料は、求職者の企業理解という面で有用な手法であるといえます。
引用元:hypex「エンジニア採用の成功事例8選!おすすめの採用広報も紹介」
引用:https://www.nttdata.com/jp/ja/
2点目は、株式会社NTTデータの事例です。同社は、製造業・流通業・サービス業などの部門において、技術力やブランド力がエンジニアに行き届いていないことが問題となっていました。
同社の競合は採用競争力が高いため、まだ転職を考えていない潜在層を狙うことを課題としています。
具体的には、以下の採用手法を導入しています。
結果、導入後の1年後には経験者採用数が倍に増加しています。エンジニアとの接点を多く持つことによって、採用ブランディングを成功させた事例といえます。
引用元:hypex「エンジニア採用の成功事例8選!おすすめの採用広報も紹介」
引用:https://www.minna-no-ginko.com/
3点目の事例は、株式会社みんなの銀行です。同社は2021年に国内初のデジタルバンクとして開業しました。同社は新興系のデジタルバンクということもあり、エンジニア採用市場内での認知度がまだまだ低いという点が問題となっていました。
そこで、認知度を高めるための情報発信を重要課題として設定しています。具体的には以下の方法で情報発信しています。
これら媒体を活用し、以下の内容を発信しています。
結果として、1年半あまりで200人を超える組織作りを成功させました。情報発信による、企業理解が採用において重要な課題であることがわかります。
出典元:d`s journal「システム領域トップと人事が連携し、「従来の銀行にはいなかった」ハイクラス層エンジニアを続々採用」
いかがでしたでしょうか。
エンジニア採用の難しさは、外部要因と内部要因が複雑に絡み合っているため、単純な解決策はありません。しかし、企業がターゲットとなるエンジニアのペルソナを明確にし、適切な採用手法を選び、候補者にとって魅力的な条件を提供することで、優秀なエンジニアを獲得する確率を高めることができるでしょう。
エンジニアを採用する際には、ぜひ本記事を参考にしてみてください!