採用競争が激化する中で、採用マーケティングを取り入れる企業は増加しています。
しかしながら、採用マーケティングの導入にあたって、以下の疑問を抱えている方は多くいるかと思います。
そこで、本記事では、採用マーケティングについて、メリット、その手順や企業の成功事例まで、幅広くご紹介します。
そもそも採用マーケティングとは何かわからないという方のために、以下2点の切り口から採用マーケティングについて解説します。
採用マーケティングは、従来の採用手法にマーケティングのアプローチを取り入れた新しい概念です。現在の激しい採用競争の中で、優秀な人材を効率的に確保するための方法として注目されています。
通常のマーケティングでは、商品やサービスの認知から購入までの過程をファネルと捉え、顧客のニーズに合わせた施策を展開します。一方、採用マーケティングでは、入社前から入社後までのプロセスをファネルとして捉え、企業の認知度や志望度を向上させ、自社のファンを増やすことを目指します。企業を商品とみなし、求職者から選ばれるために採用フローを最適化します。
また、マーケティングには「顧客が顧客を呼ぶ」という考え方があります。満足した顧客が知人に勧めることで新たな顧客を獲得するという意味ですが、採用マーケティングでも入社後の定着や活躍を含めて戦略を立てます。社員のエンゲージメントが高ければ、リファラル採用が促進され、新たな採用につながります。
採用ブランディングは、企業が求職者に自社の魅力やイメージを伝えるための施策です。一方、採用マーケティングは、効率的かつ効果的に採用活動を行うために採用市場や競争環境を調査し、採用プロセス全体を指します。つまり、採用ブランディングは採用マーケティングの一部であり、両者は密接に関連しています。両者ともに、採用活動における求職者に対するアプローチを考えるもので、今後採用活動を行う企業にとって欠かせないものです。
まずは、採用マーケティングの基礎知識として「ファネル」と「ペルソナ」という2つの言葉の意味を押さえておきましょう。
ファネルとは、先が細くなった円錐状の器具である「漏斗」のことを指します。マーケティングにおけるファネルは、見込み客の数が、認知→興味→比較・検討→購入というプロセスを進むごとに徐々に少なくなっていくことを示しています。採用活動のプロセスは、認知→興味→応募→選考→内定→入社というファネルで表現でき、それぞれの段階を経るごとに候補者の数は減っていきます。ファネルを活用し、認知から入社へと至る各段階において適切な施策を打つことが重要です。
マーケティングにおけるペルソナとは、商品やサービスを利用する具体的な人物像を指します。年齢や性別、職業、住所、趣味、家族構成など、具体的な人物像を定めることで、その人物像のニーズに合致した商品を作ることを目指します。採用活動においても、企業が採用したい人物像を細かく設定することが重要です。出身地や出身校などのデータだけでなく、性格やスキルや適性などを具体的に決めることで、求める人材にアプローチするための的確な施策を練ることができます。
採用マーケティングを導入するメリットを紹介します。主に4つあります。
採用マーケティングは、採用ターゲットに対して効果的かつ積極的なアプローチを行うことです。これにより、自社の魅力や雰囲気を効率的に伝えることで、求める人材が自社に入りたいという気持ちが強まり、結果として応募者の数が増加します。
採用マーケティングを通じて、自社にマッチする人材の採用が可能になります。スキルや経験だけでなく、人柄やキャリア志向が会社のビジョンや経営方針と一致している場合、入社後の早期離職を防ぐことができます。早期離職が減ることで、採用コスト削減といったメリットも生じます。
採用マーケティングの普及背景には、採用難の深刻化があります。そのため、次の採用期間に備えて継続的な施策が必要です。採用マーケティングを続けることで、現在は就職・転職意思のない人材からの認知を得られ、彼らが意思を変えた際に有利な採用活動が展開できます。採用マーケティングは求職者だけでなく、自社ファンの獲得にもつながります。
認知度の向上により、母集団形成がしやすくなることも採用マーケティングのメリットです。
採用マーケティングを行うことで、候補者に伝える情報が明確化され、一貫性が生まれます。採用担当者は一貫したメッセージを発信しやすくなり、より効果的に求職者にアピールできます。結果として、候補者に自社の伝えたいメッセージを強く伝えられ、競合他社との差別化にもつながります。
採用マーケティング実施の具体的な手順について解説します。
まず最初に、自社の強みと弱みを認識することが重要です。例として、強みには保有している技術やスキル、整った労働環境があり、弱みには若手の労働力が少ないことが挙げられます。強みと弱みを把握し、求職者に何をアピールするかを決めます。
おすすめの分析方法は以下の通りです。
自社を取り巻く採用市場の環境分析に3C分析を活用できます。3Cとは顧客・競合・自社の3つを位置付けて現状のビジネス環境を理解する方法です。採用活動では顧客を採用ターゲットに置き換え、自社の位置を把握します。
競争環境分析にSWOT分析を活用できます。縦軸に内部環境/外部環境、横軸にプラス/マイナスをとり、4象限を作成します。これにより、自社の状況をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)に分類できます。3C分析に加えて、自社の強みや弱みをどのように戦略に活かすかを理解します。
自社分析を元に、「どのような人材を雇いたいか」を明確化します。この人材像が「ターゲット」となります。ターゲットは具体的な特性を定義し、ペルソナを作成します。ペルソナはターゲットを象徴する架空の人物像で、スキルや性格、適正などを具体的に洗い出し、必須条件と十分条件に分けて設定します。
選定した採用ターゲットのニーズを把握します。例えば、労働環境や福利厚生などを事前にデータとして持つことが望ましいです。
活用できる分析手法は以下の通りです。
顧客の購買プロセスをフレーム化するもので、認識(Aware)、記憶に残る(Appeal)、調べる(Ask)、行動する(Act)、周りに勧める(Advocate)の5つのAを分類します。採用活動に置き換え、求職者の意思決定プロセスを理解します。
顧客が購入するまでのプロセスを可視化します。採用活動では求職者を対象とし、認知から採用までのプロセスを可視化し、求職者視点での施策を考案します。
ターゲットのニーズに基づき、効果的なアプローチ方法を検討し、採用計画を策定します。ファネルに基づいて段階ごとに施策を変え、採用ターゲットに興味を持ってもらう方法を見つけます。採用戦略、人材要件、雇用形態、採用人数、採用方法・選考方法、採用スケジュールを全て定め、社内で認識を共有します。
実際に採用プロセスを進めるために、母集団形成の施策を実行します。
施策の例として、以下の例が挙げられます。
採用プロセスが一段落したら、施策を振り返り、次回採用のための改善を行います。問題点やミスマッチ、応募率、離職率などを明確にし、PDCAサイクルを回して改善します。求職者の動向やニーズの変化に素早く対応するため、継続的な市場調査も必要です。
採用マーケティングを進める際に役立つ手法をいくつかご紹介します。
自社独自の採用オウンドメディアを立ち上げるのは有効な選択肢です。オウンドメディアでは、特定のフォーマットに縛られず、自社の魅力を自由に伝えることができます。また、多様なマーケティングデータを収集できる点も大きな利点です。
ただし、オウンドメディアの開設やデータの収集・分析には、専門的な知識や技術が必要であり、それにはコストと時間がかかるデメリットがあります。特に検索結果で上位に表示されるためには、SEO対策の知識が不可欠です。質の高い情報を継続的に発信し、アクセス数やコンバージョン数を維持・向上させる努力が求められます。
TwitterやInstagramなどのSNSは、採用マーケティングに広く活用されています。これらのSNSは多くの人が日常的に利用しており、シェア機能によって情報が拡散しやすいため、広範囲かつ多くの人材にリーチできる利点があります。さらに、無料で利用できるため、コストを抑えることができます。画像や動画を通じて企業のカルチャーや雰囲気をリアルに伝えることができ、フォロワーやシェアからの反応を通じてファン数や共感度を測定することも容易です。
しかし、多くの企業が利用しているため、自社の情報が埋もれやすいという課題や、高い更新頻度が求められる点には注意が必要です。また、各SNSごとにユーザー層が異なるため、自社のターゲットに最適なSNSを選定する必要があります。
Wantedlyは、優秀な若手層へのリーチを可能にする採用マーケティングツールです。Wantedlyの利用には、以下のメリットがあります。自社の採用ホームページとして利用できる点、無制限に募集の掲載が可能な点、広報ツールとして活用できる点、返信率の高いダイレクトスカウトサービスが利用できる点です。
特にWantedlyのブログ機能「ストーリー」では、企業が自由な構成や内容でコンテンツを作成できます。これにより、企業の魅力を訴求し、求職者の囲い込みを行うことが可能です。
リファラル採用は、人材の質、マッチング率、コストのいずれにおいても高いパフォーマンスを実現しやすい手法です。これは、自社の社員が友人や知人を紹介することによって行われます。リファラル採用では、紹介される候補者が現場社員の知人であるため、スキルや経験のマッチングが高い可能性があります。また、自社のカルチャーについて理解しているため、カルチャーフィットしやすい特徴もあります。
さらに、転職潜在層にもリーチできるため、候補者と早い段階から接点を持つことができます。リファラル採用を導入している企業では、採用活動費用として会食などを負担したり、紹介者に報酬を支払ったりする仕組みを用意しています。人口の減少や若年層の不足による売り手市場の中でも、優秀な人材にアプローチする手段としてリファラル採用を導入する企業が増えています。
採用マーケティング導入の成功事例を紹介します。
https://lycomm.co.jp/ja/company/info
LINEヤフーコミュニケーションズは、2013年に福岡に誕生した「LINE Fukuoka」でリファラル採用を積極的に取り入れています。特に「ポジションサーチ」という独自の取り組みを行っています。これは、履歴書や職務経歴書を基に採用チームが募集中のポジションから適したものを紹介するマッチング方法で、紹介者がポジションを検討する手間を省けるため効率的です。
また、リファラル採用を社員に認知してもらうため、ポスターの掲示やメルマガ配信など社内での啓発活動も盛んに行っています。社員の紹介を通じた採用は、入社後の定着度を高める効果があります。
引用元:https://blog.lycomm.co.jp/tag/company_section/20220727_01_recruiting_systems
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引用元:https://recruit.uuum.co.jp/
いかがでしたでしょうか。
本記事では、
という疑問を抱えている方に向けて、採用マーケティングについて、メリット、その手順や企業の成功事例まで、幅広くご紹介しました。
ぜひ参考にしてください。