採用活動について自社で考え方は持っているが、「応募者数が想定より少ない」や「面接のタイミングで自社の強みと合致していない」など求めている人材と応募する人材のギャップに悩まされていませんか?
そこで、重要になるキーワードが「採用ブランディング」です。
本記事では、
・採用ブランディングとは?
・採用ブランディングのメリット
・運用する5つのステップ
・採用ブランディングの事例
などを解説していきます。
他社と差別化した求人や、ブランディングを行いたい企業の人事担当者様は必見の内容です。是非参考にしてください。
採用ブランディングの目的は、求職者に「自社で働く価値」を感じてもらい、自社のファンを増やすことで、自社が求める人材を採用することです。広義のブランディングが商品やサービスに関する顧客向けの活動であるのに対し、採用ブランディングでは働く場としての自社を求職者に魅力的に感じてもらうことが重要になります。
具体的には、企業理念や理想の社員像、職場の雰囲気、実際に働く社員の人柄などを情報発信し、他企業と差別化を図り、独自の価値を形成することで長期的に活躍する人材の獲得を目指します。
採用ブランディングは、現代社会の労働市場における複数の要因により、企業にとって必須の戦略となっています。これらの要因には、少子高齢化による労働力人口の減少、情報の流通量の増加に伴う求職者と企業間のミスマッチ、そしてそれによる新入社員の早期離職率の上昇が含まれます。
企業が自社の採用情報を簡単に求職者に提供できるようになった結果、求職者の関心を引く情報でなければ、求職者の視野に留まらない可能性が高まっています。
さらに、企業が求職者に対して自社の都合の良い情報を中心に提供することで、求人情報を目立たせようとする傾向が強まり、その結果、入社後に期待と現実のギャップを感じた人々が退職する機会が増え、全体の離職率が上昇しています。
採用ブランディングを強化することで、求職者に対して適切な情報を提供し、自社の都合の良い部分だけを強調するのではなく、魅力的な求人情報を作成することが可能となります。これにより、応募者数を増やし、入社後の期待と現実のギャップを減らすことで、離職を防止することにも寄与します。
他社との差別化を図った求人情報を作成することで、求職者の注目を集め、離職を防止するためにも、採用ブランディングは不可欠な戦略となっています。
採用ブランディングを行うことで見込まれるメリットについて5つ解説します。
採用ブランディングを実施することで、これまで接点のなかった人材にも、自社の情報や魅力を伝える機会が増やせるため、企業の存在や価値に対する認知度の向上を見込めます。
企業の採用サイトやSNSなどでも採用ブランディングは行えるため、企業規模にかかわらず、求める人材に適した方法で情報発信が可能です。企業の認知度が高くない中小企業やスタートアップにおいても企業の存在や魅力を伝えやすくなります。
採用ブランディングとして企業情報を積極的に発信すれば、転職潜在層を含む多くの人材にリーチできます。企業の認知度が高まれば、将来の転職先候補として検討してもらえる可能性が高まります。
求職者は業界・業種を絞って、転職活動することがほとんどです。そのため、同業他社との差別化を行い、求人票に反映できていない場合には、求人が埋もれてしまい、自社の求人が目につかないことになります。
しかし、採用ブランディングを行い、自社の魅力的な要素(例:働き方、給与、商品)を発信することで、他社とは差別化された求人を作成することが可能です。
あらゆる点を他社と異なるように設定するのではなく、同じ給与や同じ働き方の中でも、自社が他社より優れている部分や企業理念などを押し出しアピールすることで競合他社と差別化することが可能です。
採用ブランディングの実施は、これまで企業との接触がなかった人材に対しても、企業の情報や魅力を伝達する機会を増加させることが可能であり、結果として企業の存在感や価値に対する認識度の向上が期待できます。
採用サイトやソーシャルネットワーキングサービスなどを通じても採用ブランディングは可能であり、企業規模に関わらず、目指す人材に対して適切な方法で情報を発信することが可能です。これにより、企業の認知度が低い中小企業やスタートアップ企業でも、自社の存在感や魅力を伝えることが容易になります。
企業情報を採用ブランディングとして積極的に発信することで、転職を検討している層を含む広範な人材にアクセスすることが可能となります。企業の認知度が向上すれば、将来的な転職先として考慮される可能性も高まります。
採用ブランディングを適切に行うことで、入社前後での企業へのギャップを小さくすることが可能です。これにより、ミスマッチを防止し、人材の定着・活躍に繋がります。
また、自社に愛着を持って入社してもらうことで、エンゲージメントを高め、長期的な視点で、リファラル採用の可能性も高まり、採用コストの削減にも貢献します。
加えて、採用ブランディングを行うことで、社員に自社の魅力を再認識してもらうことも可能であり、企業理念や自社の強みの再確認になり、帰属意識が高まり、モチベーションアップにも貢献するでしょう。
採用ブランディングを行い、訴求したい求職者に向けて情報発信を適切に行うことで、自社の求める人材で母集団が形成されることが期待できます。適切な母集団形成が内定辞退や早期離職を防止することに繋がり、長期的な視点で、求人掲載費用や採用にかかるリソースなどのコストを削減可能です。
加えて、採用ブランディングを行うことで、リファラルやダイレクトリクルーティング、自社のWebサイトなどでも募集に成功する可能性が向上するでしょう。
採用ブランディングを行う5ステップを解説します。
まず最初のステップとして、自社の採用目的の整理を行いましょう。
具体例にいかが挙げられます。
・欠員補充
・新規事業拡大による採用
・スペシャリストの採用
加えて、自社について分析を行い、採用市場での自社の立ち位置を把握しましょう。
具体例として、
・自社の商品
・サービスの特徴
・競合他社との差別化ポイント
などを挙げるようにしましょう。
ここで利用可能なフレームワークとして、下記が例として挙げられます。
・KJ法
・3C分析
まずは発散的に思いついたことを書き出し、その後、フレームワークに基づいて整理し分析する方法が一般的に良いでしょう。
また、自社を分析した内容を競合他社と比較することも重要です。競合他社の打ち出し方を把握し、必要に応じて自社の訴求ポイントを精査しましょう。自社の差別化ポイントを分析する際には、「企業情報」「業務内容」「職場環境」の3つに分けて競合他社と比較すると、自社の強みや求職者のニーズを見つけやすくなります。
さらに、中途入社社員に自社の魅力をヒアリングすることも有効です。彼らは他社と比較検討した上で入社しているため、「何に魅力を感じたのか」「他社と比較検討した部分は何か」を聞くことで、新たな気付きを得られる可能性があります。
自社の求める採用ターゲットを設定し、社内での認識の統一を図るようにしましょう。人物像が曖昧な場合、選考フェーズ毎の基準の差異が出るなどし、採用が適切に行えないということが挙げられます。
まずは、採用ターゲットを設定する際には事業戦略に基づいて、人物像を明確化しましょう。人物像を明確化する際に、人間性や価値観も重要ですが、根本的にスキルや能力面での基準を作成した後に、設定するようにしましょう。
特に、人物像を明確にする場合は、「ペルソナの設計」が効果的です。ペルソナの設計では、スキルや能力に加えて、年齢や現職、価値観、ライフスタイルなど、具体的な人物像を詳細に設定します。
応募総数の増加も重要ですが、条件に合わない応募を減らし、選定の確度を上げることも戦略としては有効です。企業理念や現場の意見、活躍している社員の特性を分析し、自社の立ち位置や競合他社との違いを把握し、求職者が企業を選ぶ際に重視する点を理解することが必要です。
■採用ペルソナについて詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
採用ペルソナの作り方とは?項目や作成のコツ、フレームワークを解説
https://uloqo.net/blog/persona/
採用ターゲットが明確になった後には、採用のコンセプトを策定するようにしましょう。採用コンセプトとは、採用活動に一貫性をもたらすためのメッセージや基本方針のことを指します。
「応募者に自社の強みをどのような言葉で伝えるか」を中心に、企業イメージの統一感を生まれさせるメッセージを考案しましょう。
メッセージ考案の際には、以下のポイントで企業の独自性をアピールしましょう。
・企業理念
・業務内容
・働く人
・社風
・社内制度
採用コンセプトの変更が多くなると、採用活動への一貫性が低下し、採用ブランディングの効果が薄れるため、中長期的な視点で変更が少ないようなメッセージにすることが必要です。
採用コンセプトに合わせて、情報を発信するチャネルを選択しましょう。企業が情報発信を行えるチャネルや形式には多様な種類があります。
具体的には、
・採用サイト
・採用パンフレット
・採用イベント
・会社説明会
・オウンドメディア
・SNS
などが挙げられます。
採用チャネルにより、求職者の特性に偏りが大きく生じます。そのため、自社がターゲットとする人材が多く存在するチャネルや媒体を狙って、情報を発信することが費用対効果を高めるためにも非常に重要です。
その中でも、企業が運営する求職者向けWebページやSNSは、企業の魅力を継続的に発信することができ、デザイン性などからも自社の特色が出せることから採用ブランディングの軸となるメディアとなるでしょう。
発信するチャネルを決定し、メッセージを公開した後には、採用ブランディングの効果がどのように現れているかをKPIなどを用いて評価する必要があります。また、採用活動は長期的にデータを集める必要があるため、マイナーチェンジは適宜必要ですが、ある程度長期的に評価する必要があります。
長期的に評価を行うためにも、アンケート調査や入社者へのヒアリング、エージェントのフィードバックを基に効果測定を実施するとよいでしょう。
加えて、採用市場は社会の景況を受けやすいため、求職者のニーズの変化に敏感になり、採用ブランディングを行う必要があります。
そのため、PDCAを回しつつも、採用コンセプトの根本の部分は変更せず、マイナーチェンジを繰り返すことが採用ブランディングを運用していく上で、非常に重要です。
採用ブランディングを発信する際に、企業が活用すべき発信手段について解説します。
自社の採用情報サイトを活用することで、求職者に伝えたい採用ブランディングのメッセージを自由に表現し、自社の特色を出すことが可能です。サイトのデザインや写真も自由にレイアウトし、コンテンツの内容を独自のものにすることで、求人媒体などの紹介などでは掲載が難しい内容も訴求できます。
例えば、社員へのインタビュー記事の掲載や、顧客のレビューの掲載などを行うことで、働いている人物のイメージや求める人材のパーソナリティを感じてもらうことができるでしょう。
ここで注意すべきポイントは、採用サイトやブログ運用のポイントは継続して更新し続けることです。カジュアルな内容や企業の周年記念や業績など多角的に企業の魅力を訴求し、サイトを充実させましょう。
近年、採用活動ではX(旧Twitter)、Facebook、InstagramなどのSNSの利用が活発になってきました。
SNSの利用はコストを抑えつつ、リーチできる人材の幅が広いため、認知度を高めるには非常に良いツールになります。
また、画像だけでなく、動画も通じて会社の様子を伝えることができ、普段見ることができない裏側などを紹介しやすいことで、企業理解度の向上にも期待できます。
ただし、採用ブログよりも高頻度で更新を行わなければ、埋もれてしまいます。また、更新しやすい点も魅力的ですが、内容によっては炎上する可能性もあるので、内容の精査は毎回必要になります。
SNSを実際に利用する場合には、採用ターゲットに応じて媒体を変えることが必要です。具体的には、Facebook→X(旧Twitter)→Instagram→TikTokの順番に年齢が若くなっていきます。また、エンジニアではX(旧Twitter)でブログなどを執筆しているケースも多く、媒体の選定は非常に重要です。
就活ポータルサイトや転職情報サイトへの自社紹介や「求人広告」の掲載も重要なチャネルになります。求職者はポータルサイトの求人を見て、条件の概要で判断し、興味を持った際には会社紹介を見るという流れが一般的です。
ポータルサイトでの会社情報を充実させることで、求職者が企業の雰囲気を少しでも知る機会になり、自社の採用サイトやその他のコンテンツに遷移を行ってもらうことも可能でしょう。
採用ブランディングの内容を採用ポータルサイトに求人情報だけでなく自社紹介でも反映させ、掲載することで、採用の方針に統一感を生み出すことができ、求職者からの安心感が得られるでしょう。
企業説明会やセミナーは雰囲気作りを自社に合わせてブースづくりなどを行うことで、採用ブランディングを行うことが可能です。
選考を前提とした企業説明会だけでなく、交流会やセミナー、勉強会の開催を行うことで、転職潜在層へのアプローチが行えます。
カジュアルな場でも採用ブランディングを行うことが可能なため、自社のファン化を促し、採用につなげていくことが重要です。
ここでは実際に採用ブランディングの事例を解説していきます。
第一カッター興業株式会社は、「採用ページ・採用動画」の作成により、「サムライ採用」コンセプトを掲げて、採用ブランディングを成功させました。
コンクリートやアスファルトの切断・穿孔工事を専門とする同社では、「社員との関わりと仕事の進め方」や「企業の技術力の高さ」などのビジュアル的にわかりやすい情報が不足しており、不安を感じた社員がいました。
そこで、動画を用いて、鉄やアスファルトなどの頑丈な構造物を破壊・解体するというシンプルな動画を作成します。スイカをウォータージェットで断ち切るような、ユーモアと技術力に溢れた動画にすることで、社員の雰囲気と会社の業務内容を十分に理解ができる内容に構成しました。
業務は肉体労働にあたるため、応募者数が少ない現状がありましたが、会社自体に興味を持つ大きなきっかけを作り出すことに成功しました。
三幸製菓株式会社は、採用ブランディングを行う際に、「応募人数=採用人数」を掲げて採用活動を行いました。
経緯としては、応募人数を増やしたのは良かったものの、本社は新潟、菓子メーカーという事実とのミスマッチが多数発生していました。そこで、大胆にも、採用ナビサイトの利用を停止し、「おせんべいが好きか?」と「新潟で働けるか?」というシンプルな質問を投げかけるようにしました。また、応募者を8つのタイプに分けて、選考フローを個人に合わせて行うように変更しました。
この結果、応募人数は減少しましたが、会社との相性が良いと感じた求職者のみが選考フローに残リマした。採用お見送りメールを作成する必要性が大幅に減少したことや、面接にかける時間も減少したことで、必要な工数に時間を割り当てることが可能になり、効果的な採用活動に変わりました。
今後は定期的にミートアップイベントや企業説明会の場を活用して、自社の認知度を高めつつもマッチングの度合いを測っていくことを重要視しています。
採用ブランディングで重視したことは、「より早く動き始める」と「Webを活用する」を行いました。
経緯としては、採用活動の早期化の傾向が高まり、コロナ禍の影響もあり、オンラインでの採用活動も活発になりました。そこで、採用ブランディングの中でも採用手法について他社と差別化を図りました。
一般的に三井住友銀行の知名度は非常に高く、企業信頼性も高かったのですが、外資系企業やメガベンチャーと比較して、採用期間が遅いことで、応募する人が少ないことに課題がありました。
そこで、採用の期間について焦点を当て、早期の採用をブランディングしていきました。具体的には、3年生の就職イベントの時期を2ヶ月前倒しにしたことや、イベントの回数を3割程度増加させるなどを行いました。
回数や時期を変更したことで、早期から採用に手間をかけることになりますが、サマーインターンシップで前年比4倍もの応募者数を獲得することができました。
採用活動の時期に焦点を当てて、採用ターゲットの層に合わせて、早期から採用イベントを行うことで、エントリーの獲得につなげました。採用手法に手詰まり感がある場合は、時期の変更を行うことも非常に重要なポイントになります。
本記事では採用ブランディングについて解説しました。
採用ブランディングは採用活動についてコンセプトを決めるだけでなく、認知の方法や選考フローまで、一気通貫して行うことで、成立します。そのため、採用活動において、自社の考え方と乖離しているフローがある場合には変更する事が重要です。
加えて、採用ブランディングを行う場合には、求職者にアピールするコンテンツが必要になるために、訴求ができる適切なコンテンツの作成についても社員と協力し行うことが重要です。