近年、深刻な人手不足の影響により、採用活動の難易度が高くなっています。加えて、採用チャネル、求人媒体が多様化していることで、採用コストも増大しています。
そこで注目されているのが、採用業務の一部を外部に委託し、採用活動を効率化する採用代行(RPO)です。
一方で、
・採用代行に違法性はないのか?
・許可を得る必要はあるのか?
・正しい申請方法が知りたい
など、さまざまな疑問を持つご担当者様も多いと思います。
本記事では、採用代行の概要から、導入前に必要となる許可、委託募集申請の流れまで、詳しく解説します。
採用代行とは、採用に関する業務を外部の企業が代行して行うサービスのことで、「RPO(Recruitment Process Outsourcing)」とも呼ばれます。
採用戦略の策定、求人媒体や採用要件の決定、スカウトメールの送信、面接のスケジューリング、選考、採用、そして内定者へのフォローアップなど、多岐にわたる業務を代行・支援します。多数の企業と求職者をマッチングする「人材紹介」サービスと比較して、採用代行(RPO)は企業の視点により近い形で採用活動を行うという特徴があります。
採用代行(RPO)の利用により、企業の採用担当者の業務負荷が軽減され、コア業務にリソースを集中させることが可能になります。また、ノウハウが不足している企業も、採用支援サービスを導入すれば、採用活動に注力することができます。
採用手法が多様化する中、効果的な採用活動を行うには、多くの人手・スキル・労力が必要です。
採用代行を利用することで自社のリソース使用を削減し、コア業務へ時間と労働力を集中させる企業が増えています。
豊富な専門知識やノウハウを持つ代行業者に委託することで、採用業務の質を向上させることもできます。
近年、人材獲得競争が激化しているITエンジニアの採用市場で特に利用が進んでいます。
結論から言うと採用代行(RPO)のサービス自体に違法性はありません。
自社で選考や合否の決定を行い、採用試験の作成などの事務的な作業や求職者のスカウトを採用代行業者に委託する場合、違法ではなく、厚生労働省や都道府県労働局長への届け出も不要です。
しかし、採用代行業者への委託内容が「委託募集」に該当する場合は、企業と代行事業者がともに厚生労働省か都道府県労働局長から許可を得る必要があります。
厚生労働省「Ⅲ 委託募集」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/bosyu/dl/03.pdf
採用代行(RPO)の利用が違法になるケースは主に以下のような場合です。
「委託募集」は、労働者の募集や選考自体を自社の従業員ではない第三者に委託することを指します。「委託募集」は、厚生労働省職業安定局発行の募集・求人業務取扱要領で定められている労働者募集方法の一つであり、「文書募集」「直接募集」「委託業務」の3つに区分されています。
・文書募集:募集主である使用者が、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出・頒布、インターネット等を用いて行う労働者募集の方法
・直接募集:文書募集以外の方法で、使用者(又は使用者に雇われている者)が労働者の募集を行う方法
・委託業務:募集主である使用者が、第三者(募集受託者)に委託して募集、選考、採用活動を行わせる方法
委託募集に該当する業務を行う場合は、受託企業と委託企業がともに厚生労働省や都道府県労働局長から許可を得る必要があります。許可を受けずに委託募集を行った場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰に処せられる可能性があります。
委託募集をするための「許可」とその「条件」について、許可が必要な場合と不要な場合に分けて具体的に説明します。
先述の通り、委託募集とは「労働者の募集を第三者(自社従業員以外)に委託すること」です。
採用活動における「募集」の業務を委託する場合には、許可が必要です。
委託募集の許可基準は「職業安定法第36条」に規定されており、
「労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして報酬を与えて労働者の募集に従事させようとするときは、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
② 前項の報酬の額については、あらかじめ、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
③ 労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして報酬を与えることなく労働者の募集に従事させようとするときは、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。」
となっています。
労働新聞社「職業安定法 第36条~第43条」
https://www.rodo.co.jp/laws/117561/
委託側、受託側の許可基準は以下の通りです。
【採用代行における委託側の基準】
事業主の徳性 :職業安定法、労働関係法案に係る重要な違反をしていない
募集に係る労働条件:労働条件が適切、法令に違反していない、
同業種の賃金水準に著しく低くない
業務内容・労働条件が明示されている
社会保険・労働保険に適切に加入している
報酬 :厚生労働大臣の認可を受けた報酬以外の財物を提供しない
【採用代行における受託側の基準】
事業主の徳性:職業安定法および労働関係法令に重大な違反がない
判断能力 :青年被後見人または被保佐人でない
必要な知識 :労働関係法令および募集内容・職種に関する十分な知識を有している
募集期間 :募集を行おうとする期間が1年を超えない
報酬 :支払われた賃金額の100分の50未満まで
これらの条件は健全な企業運営が行えるならばクリアできるものです。採用代行業者を選定する際は、これらの基準を参考にし、慎重に選ぶことが重要です。
前節で少し触れましたが、採用代行の委託内容によっては、委託側に許可が不要となります。
例えば、企業が自社で募集や選考を行い、採用試験の問題作成だけを外部に委託した場合、これは第三者が募集を行ったとは見なされません。そのため「委託募集ではない」と判断されます。
また、転職エージェントやヘッドハンティング会社が、特定の職位の求職者を募集し企業に紹介する場合も、「委託募集ではない」と判断され、このケースでは職業紹介に該当します。
採用代行は採用に関わる業務を「委託」することであり、委託範囲や人材の雇用経路によって、委託側企業が許可を取る必要性が変わります。外部サービスを利用する際は、委託許可が必要かどうかを確認することが重要です。
採用代行を利用する際の、委託募集の申請の流れを説明します。
流れは大まかに以下の通りです。
1.必要書類を記入する
2.期日を守って書類提出する
3.審査結果を待つ
まずは、申請に必要な書類を用意し記入しましょう。
「都道府県労働局長」へ提出する書類が必要です。また、一定の条件に該当する場合は「厚生労働大臣」の許可が必要です。
「都道府県労働局長」へ提出する書類には以下のものがあります。
・委託募集許可等申請書(様式第3号)
・上記許可の内容を証明する帳簿や書類
「厚生労働大臣」の許可が必要になる条件は、以下の通りです。
・募集人数が100名以上になる場合
・ひとつの都道府県から30人以上募集する場合
これらの条件に該当する場合には許可が必要になるので、該当する場合は注意しましょう。
書類の記入を終えたら、次は期限までに提出します。都道府県労働局長と厚生労働大臣へ提出する場合で期限が異なりますので、注意しましょう。
提出期限は以下の通りです。
都道府県労働局長:募集開始月の14日前まで(正本1部を提出)
厚生労働大臣 :募集開始月の21日前まで(正本と写しを1部ずつ提出)
申請後、委託募集の許可基準に基づき審査され、許可・不許可、条件付きの許可といった判断がなされます。
許可の申請手続きは、募集主(委託側)の代わりに採用代行業者(受託側)が行うことも認められているため、手続きに不慣れな場合は許可申請も一緒に進められる業者へ任せるとよいでしょう。
採用代行サービスを選ぶ際には、注意したい5つのポイントがあります。
・依頼したい業務に十分に対応できるか
・採用実績は豊富か
・予算と費用は見合っているか
・円滑なコミュニケーションがとれるか
・自社の要望に沿って実施してくれるか
5つに分けて解説していきます。
採用代行業者によって、対応可能な業務に幅があります。採用代行サービスを提供する企業が、全ての採用業務を必ずしも扱えるわけではありません。したがって、自社が委託したい業務をその企業が対応できるかどうかを確認することも重要です。
また、自社が委託したい業務を明確化する必要があり、これまでの採用活動を振り返り分析することが求められます。これらを踏まえて、どの業務を外部に委託するかを考えてみましょう。
採用代行サービス提供会社を選定する際、実績は重視すべき指標です。
採用代行の実績がある会社と、そうでない会社とでは、一連の採用の流れのスピード感の差であったり、蓄積されているノウハウの差が大きくあります。たとえば、IT企業の場合、エンジニアの仕事やIT業界の動向、繁忙期や転職活動が活性化する時期などを理解していなければ、採用代行サービスの精度に影響します。
自社が所属する業界での支援実績や業界知識がどれだけあるのかかまで確認し、自社とのマッチ度も含めて選定することが重要です。
代行業者が示す見積もり内容が明確かどうかを確認しましょう。
委託先によってサービス利用の費用は変動します。自社の委託する業務内容や予算と、業者の提示する費用とを見比べて利用するサービスを選ぶことが大切です。また、見積もり内容に曖昧な点がある場合は、直接確認するようにしましょう。
採用代行においては、自社の求める人材や採用目標について、しっかりと共有する必要があります。
自社と委託先とのコミュニケーションが不足していた場合、採用代行業者の自社に対する理解が深まらず、ミスマッチの人材を獲得する恐れがあります。この事態を避けるためにも、日頃から業者との密なコミュニケーションを図ることが重要です。
採用活動の手法は企業ごとに異なるため、要望に応じた業務遂行が可能かどうかを確認することが重要です。
採用代行サービスを選定する際には、自社の状況を明確に伝え、コストについての相談や自社のルールについてのヒアリングを行ってくれるサービスであれば、安心して任せることができるでしょう。
さらに、採用ペルソナ(自社が望む人材像)をしっかり共有し、そのような人材が市場にいるのかリサーチできる代行業者であるかも見極める必要があります。企業で使用しているツールがある場合、それが委託先と連携可能かどうかを事前に確認しておくと良いでしょう。
また、情報を共有するタイミングを決めておくと、ミーティングなどで現状を報告しやすくなります。
おすすめ採用代行サービス5選を紹介します。
引用元:https://digireka-hr.jp/enjinia_saiyo_lp/
特徴
・DX人材やデジタル人材の採用代行に強みを有し、500社以上との取引実績有
・業界最大手の小売企業や外資系コンサルティングファーム、通信系大手企業など大手企業との取引実績多数
・継続率80% 平均継続年数3年 顧客満足度の高いサービス
・通常の採用代行に加え、採用広報やプロセス改善、採用マーケティングやダッシュボード構築など、包括的な支援が可能
・デジタル人材以外の対応実績も多数 営業・バックオフィス・事業開発・施工管理・エクゼクティブ等の対応実績有
費用・月額30万円(税抜)~
※ご予算や支援範囲に応じて要ご相談可能
お問合せ先
https://digireka-hr.jp/enjinia_saiyo_lp/
引用元:https://hr-compass.jp/lp/lp04/
特徴
・採用人数に応じて選べる3プラン
・独自ツールを活用した採用戦略の最適化に強みがある
・独自ツールは契約終了後も継続使用可能
・採用の内製化までサポート
費用
詳細はお問い合わせください
お問合せ先
引用元:https://ulforce-one.co.jp/
特徴
・従業員50名以下の中小企業、ベンチャー企業の求人広告に特化
・中途、新卒、専門職など5,000件以上の採用支援実績
・50媒体以上を取り扱い幅広い採用課題にフィット
・採用難業界にも強みあり
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費用
・アルバイト・パート採用:1~4週間~/0円(成果報酬)~150,000円程度
・中途採用:1ヶ月~/300,000円〜(媒体・プランによって料金が異なる)
・新卒採用:1年間/800,000円~(媒体・プランによって料金が異なる)
お問合せ先
引用元:https://www.ssen.co.jp/
特徴
・新卒の採用に特化した採用代行サービス
・就職サイトの運用・代行からセミナーへの動員、内定者フォローまでトータルでサポート
・説明会の企画運営、資料作成など採用活動の精度をあげるために採用業務をアウトソーシングすることも可能
・採用の「作業部分」をアウトソーシングし、学生と直接話すというコア部分に専念できる
費用
最低期間3ヶ月
基本料金10万円
月額5万円〜
お問い合わせ
https://www.ssen.co.jp/
本記事では、採用代行について、導入する際の手続きも含めてご紹介しました。
許可が必要な場合の条件や申請手順をしっかりと理解し、採用代行を導入することで、採用活動の質を向上させることができます。この記事を参考に採用代行の導入を検討してみてはいかがでしょうか?