有効求人倍率の上昇などによって、企業の採用活動は複雑化が進み、採用単価(採用コスト)の膨らみに悩んでいる採用担当者様も多いのではないでしょうか。
・採用単価が膨らんでしまい、抑えたい
・採用単価の一般的な相場がわからない
・採用活動におけるコスト配分をすれば良いのかわからない
など、さまざまな悩みを抱えている方もいるでしょう。
本記事では、「採用コストの概要」や「相場」「コストを抑える方法」「注意点」など詳しくご説明します!
採用コストとは、企業が新しい従業員を雇用する際にかかる費用のことを指します。通常、求人広告から採用決定までの費用を含みます。採用コストは「内部コスト」と「外部コスト」に大別できます。
一方、採用単価とは1人当たりの採用コストを指します。
採用にかかる費用には、「内部コスト」と「外部コスト」の2種類があります。
内部コストは、企業内部での採用活動にかかる費用を指します。これは主に面接官や採用担当者の人件費ですが、セミナーや説明会への交通費なども含まれます。ただし、内部コストには社内紹介による謝礼金など、見えにくい費用も含まれており、それらを換算して費用対効果を評価することが難しい場合もあります。
一方、外部コストは、企業が外部に支払う費用を指します。これには、求人広告の掲載費、人材紹介会社への手数料、説明会の会場費などが含まれます。外部コストを管理するためには、費用対効果を重視し、複数の採用手法を検討して効率的な費用削減や効果的な母集団形成を目指し、定期的に見直すことが重要です。
採用コスト・採用単価を算出する方法は、以下の通りです。
採用コストを採用人数で割ると、採用単価を算出することができます。
採用コストの一般的な相場はどれくらいなのでしょうか?「雇用形態」「職種別」「企業規模別」にご紹介します。
まずは、「アルバイト」「新卒」「中途」それぞれの採用コストの平均相場をご紹介します。
アルバイト採用における1人当たりの採用コストは、2014年時点で約5.2万円でした。2019年まで有効求人倍率が上昇し、2019年8月時点で1.58倍に達していたことを考慮すると、採用コストはこれよりも上がった可能性があります。
しかし、2021年は新型コロナウイルスの影響により、有効求人倍率が1.13倍(2021年6月現在)に低下し、採用コストも減少した可能性があります。
参照: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年6月分)」
株式会社マイナビの「2024年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」によると、新卒採用コスト総額の平均は287.0万円で、一人当たりの採用コストの平均は56.8万円です。
調査では、「上場・非上場」または「製造業・非製造業」といった視点からも平均採用コストが分析されており、非上場企業や製造業の企業は一人当たりの採用コストが高くなる傾向があることが分かります。
株式会社マイナビの「中途採用状況調査2024年度版」によると、中途採用コストの予算平均は770.4万円、実績平均は629.7万円です。
中途採用コストでは、人材紹介料が最も大きな割合を占めており、一人当たりの採用コストが高くなりがちです。主な採用手法には、求人媒体、中途人材紹介、ダイレクトリクルーティング、採用代行などがあります。
参照:株式会社マイナビ「中途採用状況調査2024年度版」
中途求人広告費用の相場を職種別にご紹介します。
求人広告費をかけた職種は「営業」は50.0%、「管理・事務」は39.6%、「企画・経営」は28.7%などとなっており、採用数の多い職種に広告費をかけている状況がうかがえます。いずれの職種においても前年より増加しています。
参照:株式会社マイナビ「中途採用状況調査2024年度版」
中途求人広告費用の相場を企業規模別にご紹介します。
3~50名に分類される企業は約20万円、それ以外の企業は約40万円と小規模企業と中・大規模企業の間に格差が見受けられます。
新卒における採用コストを上場・非上場企業に分けて見ていきます。上場企業は、採用費総額(917.6万円)や広告費(606.7万円)、セミナー運営費(206.6万円)など、ほぼすべての項目で非上場企業に比べて大幅に高い費用を支出しています。
非上場企業は、全体的に支出が低く、特にインターンシップ費用(49.3万円)や内定後の費用(29.4万円)において顕著に表れています。
また、20人以上の採用では949.2万円と大幅に増加しており、大規模な採用活動が高コストであることがわかります。
参照:株式会社マイナビ「中途採用状況調査2024年度版」「2024年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」
ここでは、採用コストを抑える方法を5つご紹介します。以下の通りです。
・内定辞退者を減らす
・ミスマッチを減らす
・求人広告媒体を再確認する
・採用広報に力を入れる
・内部コストを見直す
内定辞退率も採用コストに大きく影響します。辞退率を下げるためには、内定者の本音を引き出すクロージング面談やオフィス見学、従業員との会話の機会を提供し、内定者の志望度を高めることが大切です。
また、定期的に連絡を取り、内定者の企業に対する信頼を高めることも重要です。
短期間での離職を防ぐためには、面接時に数値などを用いて評価基準を可視化すると良いでしょう。面接担当者の評価のずれを小さくするために、面接評価シートを活用するなど、選考フローを見直します。
また、自社のメリットだけでなくデメリットも伝えることが重要です。会社説明会や面接で企業の社風や価値観と合致するかを確認し、ミスマッチを減らします。
求人広告媒体の見直しをすることでも、ミスマッチを減らすことができます。具体的には以下の点を確認します。
・出稿する媒体の適正
・出稿時期の適正
・応募者数が目標を満たしているか
・採用人数の適正
これにより、ミスマッチを減らし、早期離職を防ぐことができます。
採用広報とは、企業で働くイメージを持ってもらうために情報を発信することです。SNSや自社の公式ホームページ、求人ページでの情報発信を充実させましょう。企業の文化や価値観、ビジョンなど、独自の要素を強調することも大切です。
マッチング率の高い求職者に出会うためには、年収だけで動かない層や転職を考えていない潜在層など、幅広い人材に企業を知ってもらう必要があります。実際に入社してみないとわからない企業の魅力を広報していきましょう。
内部コストの大部分は人件費で構成されており、そのためにお金の流れが見えにくいことが特徴です。無駄な作業や非効率な業務プロセスがないかを見直すことで、コスト削減が可能です。
採用業務のマニュアルが整備されていない場合は、まずマニュアルの作成を行いましょう。作成したマニュアルを基にPDCAサイクルを回すことで、作業効率が向上します。
ここでは、採用コストを抑えるのに効果的な採用方法をご紹介します。以下の三つです。
・ソーシャルリクルーティング
・リファラル採用
・ダイレクトリクルーティング
「ソーシャルリクルーティング」とは、FacebookやTwitterなどのSNSを利用した採用手法です。
ソーシャルリクルーティングは既存のSNSを利用する方法のため、基本的に無料で利用することができます。具体的には、求人広告の配信やブランド露出にかかる費用が少なく済む場合が多いです。
一般的な求人サイトや人材紹介は、コストが数十万〜数百万万円かかりますが、そのコストが抑えられることは大きなメリットになっています。ソーシャルリクルーティングを活用することによって、自社の情報をより多くの人に共有するという、効率的な採用活動も可能です。
リファラル採用とは、すでに勤務している社員の親族や知人、友人に自社を紹介してもらい、興味を持ってもらったら入社を勧めるという手法です。
社員が直接紹介するため、メディアやエージェントの仲介料がかかりません。そのため、転職エージェントを使うと平均で100万かかると言われているコストを削減し、人材を獲得できることになります。
ダイレクトリクルーティングとは、自社に合った人材を企業自体が見つけ出し、直接アプローチをする採用手法のことです。基本的にダイレクトリクルーティングでかかる費用は、人材データベース利用料、イベント開催費用になります。
そのため、採用手法として、最も一般的な求人サイトよりは、年間の採用コストは高くなっているものの、ダイレクトリクルーティングと活用メリットの似てる人材紹介(エージェント)と比べると半分以下に費用を抑えることができます。
採用コストを抑えることに着眼しすぎるあまり、長期的な視点で考えることができなくなってしまうこともあります。ここでは、採用コストの削減に取り組むときの注意点を三つご紹介します。
・費用対効果のバランス
・人事担当者の負担
・採用の「質」
採用単価を抑えることは、採用活動全体の費用負担を軽減することにつながりますが、バランスを見ながら検討することが大切です。採用単価を抑えても、適切な人材が集まらなければ支払った費用が無駄になります。
採用単価は利用するサービスや施策の費用対効果を見定めたうえで考えるべきです。自社が求める人材を効率よく採用するためには、採用単価を考慮する視点が重要です。
そのため、採用活動を開始する前にデータ収集や分析が行いやすい体制を整え、採用活動後に結果をデータとして抽出しやすい環境を作りましょう。これにより、翌年以降の採用活動に役立てることができます。
採用コストを削減した結果、人事担当者の負担が増えてしまっては意味がありません。負担が増えると内部コストや人件費が増加し、人事担当者のモチベーション低下や離職につながる可能性もあります。
採用コストを削減する際には、人事担当者にヒアリングを行い、現状や改善点についての意見を収集することが重要です。
「採用の質」とは、求職者と自社のマッチ度を指します。コスト削減を重視するあまり、採用の質が低下すると本末転倒ですので注意が必要です。
採用の質を維持・向上させながらコスト削減を行うことが重要です。例えば、採用ツールの削減により、求める人材が集まりにくくなるようであれば、それは必要なコストとして残しておくべきです。
採用活動には多くの費用がかかります。説明会や面接会の開催には会場費や資料作成費、人件費が必要ですし、求人を出す場合には求人広告掲載費や転職エージェントへの紹介報酬、入社後の研修や教育にも費用がかかります。全ての費用を完璧に賄うことは不可能です。
重要なのは、まずどこに費用を投じるべきかを考えることです。採用の最初のステップである「求人の掲載」を検討する際に、コストを見直すことが重要です。
求人の掲載方法には、無料と有料の2種類があります。無料で行える施策、有料でも得られる費用対効果が大きい施策について、それぞれ見ていきましょう。
無料で求人を掲載できる手段には、
・ハローワークや店頭ポスター
・無料の求人検索エンジン
・知人やリファラル採用
などがあります。
これらは利用しやすいものですが、情報が限定されています。ハローワークや店頭ポスターなどは特になじみのある採用方法なので、実践するのが良いでしょう。先ほど紹介したリファラル採用も、コストを抑えられる上に効果の高い施策と言えます。
一方、有料で求人を掲載できる手段には、求人情報誌や求人情報サイト、転職エージェント、人材派遣会社があります。掲載単価は媒体やプランによって異なりますが、一般的な相場はパート・アルバイトの場合1~5万円、中途採用の場合10~30万円、新卒採用の場合80~150万円程度です。転職エージェントの場合は、入社した人の年収の約30%程度が報酬として支払われます。
無料で求人を掲載する場合、情報が制限される一方、有料の場合は広く情報を届けられますが、費用がかかります。どちらの方法を選択するかは、企業のニーズや予算に応じて検討する必要があります。
本記事では、採用コストの概要やその相場、コストを抑える方法、注意点などについて詳しく解説しました。
削減できるコストは削減しつつ、自社のリソースを効果的に分配できるように、どこに費用を投じるべきか考えることが大切です。本記事が採用活動の成功の一助となれば幸いです。