採用において歩留まりの把握は非常に重要です。選考の過程において応募者離脱を防ぎ、内定者辞退を減らすためにも、採用歩留まりの改善は必要不可欠になります。
採用担当者様の中には、
など、疑問や不安を感じられているご担当者様も多いのではないでしょうか。
本記事では、採用の歩留まりの設定方法や低下しやすい項目、歩留まりの改善策について解説していきます。
まず「歩留まり」について説明します。歩留まりとは、製造業において、投入された原料や素材に対して実際に得られた製品の割合を示す指標のことです。この割合を百分率で表したものが「歩留まり率」となります。一言で表すなら「投下量に対してどれだけ完成品を作ることができたか?」を示します。
採用の文脈における「歩留まり」とは、採用プロセスの各段階で次のステップに進んだ候補者の割合を示します。例えば、書類選考から面接に進む候補者の割合や、内定通知を出して内定承諾する候補者の割合などがこれにあたります。具体的な採用歩留まりの求め方は「選考通過数 ÷ 選考対象数 × 100」で計算することができます。
例えば、10人に内定を出したが実際に5人が内定を承諾した場合、この場合の内定承諾率(入社の歩留まり率)は「5人 ÷ 10人 × 100 = 50%」となります。このように、各選考段階での歩留まり率を適切に管理することで、採用がどれだけうまくいっているか?を定量的に判断することができます。
採用プロセスにおける一般的な歩留まり項目は以下が挙げられます。歩留まり項目は、新卒採用や中途採用など、選考フローによって異なるため、該当する項目ごとに歩留まり率を計算しておくことが重要となります。
そもそもなぜ採用歩留まりを設定する必要があるのか気になる方もいらっしゃるかと思います。そこで重要な理由を3つ紹介します。
各採用フローにおける歩留まり率を算出し把握することによって、どの段階において候補者が離脱しているのか、またその原因を具体的に分析することが可能となります。数値化されたデータに基づく分析は、具体的な問題点を浮き彫りにし、効果的な対策を講じるための一歩となります。
例えば、選考前のカジュアル面談後に選考希望者の数が著しく低下する場合、次のような原因が考えられます。
また、最終面接前に多くの候補者が離脱する場合には、以下のような原因が考えられます。
このように、各段階で発生する問題点を具体的に分析し、データに基づいたボトルネックの特定が可能です。
歩留まり率が悪い項目が明確化されれば、次に取るべき施策がより明確になります。これによって、採用活動全体の品質向上を図ることができます。
例えば、次のようなケースが考えられます。
書類回収時のコミュニケーションを改善することで、応募者の質と量を増やすこともできます。具体的には応募者に対するフィードバックを迅速かつ丁寧に行うことで、次の選考ステップへの意欲を高めることが可能になります。
候補者の他社選考状況を事前に把握し、スケジュール調整を柔軟に行うことによって、候補者にとって負担の少ない案内方法を考えることが重要となります。これにより面接設定率を向上させることができるようになります。
内定承諾における歩留まり率が低い場合、面接内容をより魅力的にし、候補者が自社に入社したいと思うようなアプローチを取る必要があります。
昨年の実績や競合他社との歩留まり率を比較することによって、自社の採用活動の現状を客観的に評価することが可能になります。定量的なデータに基づいた評価を行うことによって、感覚的・主観的な判断を排除し、根拠に基づいた改善策を導き出すことが可能になります。
例えば、昨年と比べて採用効率が向上したかどうかを数値で確認し、具体的な成功要因を分析することができます。また、競合他社と比較することによって、自社の強みや改善点を明確化し、効果的な採用戦略を立てることができます。
歩留まり率が低下しやすい項目は5つあります。
採用フローの初期段階であるエントリーから会社説明会までの間に、歩留まり率が大きく低下することがあります。これは気になる企業に手当たり次第応募する人や軽い気持ちで応募する人が多いことが主な原因となっています。
この問題を解決するためには、エントリー後すぐに説明会を開催することが有効だといえるでしょう。エントリーから会社説明までの期間が長いと、候補者から会社への興味が薄れてしまいます。
具体的には、応募者に対して迅速かつ魅力的なフォローアップを行い、興味を持ってもらえるようにすることが大切となります。
例えば
などの工夫が求められるでしょう。
書類選考や筆記試験の段階でも歩留まり率が低下しやすいです。この段階では、企業が意図的に応募者を絞り込むため、歩留まり率の低下はある程度は想定内のことといえます。しかし、応募者がこのタイミングで選考を辞退することもありえます。
この段階での選考辞退が多く、歩留まり率の改善が必要であるならば、応募者が選考に進む意欲を高めることが重要となります。具体的には、書類選考や筆記試験の案内を出す際に、企業の魅力や選考の意義を強調するメッセージを送ることが効果的だと考えられます。また、もしそもそも応募者数が少ない場合は、母集団形成時のアプローチ方法や採用チャネルを見直す必要があるといえます。
面接の日程調整から実際の面接に至るまでの間にも歩留まり率が低下しやすくなります。これは応募者が直接企業に訪れる必要があるため、ハードルが高くなってしまうからです。また他社の内定を受けてしまった場合、応募者が面接を辞退することも多くなると考えられます。
この問題を解決するためには、面接日程の調整を迅速に行い、応募者のスケジュールに柔軟に対応することが必要となります。また他社の選考スケジュールを把握して、自社の採用スケジュールを適宜調整することで、競合他社からの優位性を得ることができます。
内定を出した後、実際に内定を承諾する段階でも歩留まり率は低下しやすくなります。この段階での離脱の原因は、他社と比較して自社に入社するメリットを感じてもらえなかったからである可能性が高いです。
内定承諾率を向上させるためには、内定出しの段階で自社の魅力を再度強調することが重要になります。具体的には
などの工夫が考えられます。また、面接官の教育を強化し、内定出しの際のコミュニケーションを改善することも有効となります。
内定承諾後から実際の入社までの間に歩留まり率が低下することもあります。これは他社からより良い条件のオファーを受けた場合や、内定後のフォローが不十分な場合に発生しやすいです。
この段階での歩留まり率を改善するためには、内定者への継続的なフォローが重要になります。具体的には、
歩留まりを改善するための具体的な5つの方法を解説します。
応募者に対する迅速な対応は、歩留まり率の改善に直結します。例えば、応募があった際には24時間以内に返答し、面接の1〜2日前にはリマインド連絡を行うなど、候補者への細かな連絡を心がける必要があります。候補者対応が遅れてしまうと、競合他社に先を越されるリスクが高まり、候補者の選択肢を増加させることに繋がってしまいます。
さらに、面接日程の調整もスピーディに行うことが重要です。応募者にとって、スムーズな採用プロセスは好印象を与える要因となります。採用担当者は柔軟なスケジュール調整を行い、候補者の都合と合わせた日程を提案するよう努めるべきです。
選考期間を短縮することも、歩留まり率の向上に効果的となります。長引く選考プロセスは、他社での内定を先に受ける原因となり、候補者が辞退するリスクを高めてしまいます。新卒採用では1カ月以内に、中途採用では2〜3週間以内に選考を完了させることが理想のスパンだといえるでしょう。
選考期間の短縮を実現するためには、以下の方法が考えられます
内定辞退を防ぐためには、候補者への動機付けが欠かせないでしょう。特に座談会や面接など直接的なやり取りを通じて、候補者に自社の魅力を伝えることが重要になります。具体的には、以下の項目に焦点を当てて動機付けを行っていくと良いです。
過去に入社した社員へのヒアリングを通じて、どの段階でどのような動機形成が効果的であったかを分析し、それに基づいて改善策を講じることも有効だと考えられます。
>面接官は応募者にとって企業の顔であり、面接官へのイメージ候補者の入社意欲に大きく影響します。そのため面接官には、応募者に安心感や好印象などポジティブな印象を与えられるような対応を徹底させることが必要になります。以下の点に注意して面接官を教育しましょう。
面接官の教育を定期的に行い、面接の質を向上させることで、歩留まり率の改善を達成することができます。
母集団形成とは、自社の求人に興味を持つ候補者を集めることを指します。質と量の両方で最適な母集団を形成することが、効果的な採用活動の鍵となるでしょう。具体的には以下の方法で母集団を形成しましょう。
ただ闇雲に候補者を集めるのではなく、ターゲット層を明確化し、効率的にアプローチすることが重要になります。例えば、特定のスキルセットを持つ候補者に対しては、そのスキルを活かせるポジションやキャリアパスを強調した情報発信を行うと効果的です。
本記事では
など、疑問や不安を感じられている採用担当者様に向けて
について解説しました。ぜひ参考にしてください。